夜空と陸とのすきま

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レッド・マーズ/キム・スタンリー・ロビンスン

「レッド・マーズ」、「グリーン・マーズ」、「ブルー・マーズ」と200年続く火星開拓史、火星三部作の開幕篇。

2026年、百人の科学者が火星に植民するため宇宙船<アレス>に乗って旅立つところから始まり、居住施設建設、地球から送られてくる数万の植民者たち、長命薬の開発に衛星まで届く宇宙エレベータの建造とテラフォーミングが進み著しく発展するが、地球で戦争が起こり、火星でも革命が勃発して、みんな破滅してしまうまでのお話。

地球では多国籍企業ブイブイ言って所得格差が激しく、貧困層が全財産を投げ打って火星に植民しても、火星側は急激な移民増加に受け入れ体制が整っていなくて一時保留され、閉じ込められて不満が爆発して革命という名のテロ攻撃を始めちゃうあたり、負の連鎖が続いている現世界を垣間見るようで怖かったです。うーむ、さもありなん、リアル火星移住。終盤の宇宙エレベータが破壊されるシーンは大スペクタクルで映画向きですね。(企画された映像化は座礁に乗り上げたみたいですが…)

章ごとに視点人物が変わるけれど、登場人物全員がほぼ情緒不安定で、初っ端から殺人する主人公に感情移入ができず、女性キャラは躁鬱だし、そのあたりが少し読みづらかった。長命薬のおかげで長生きする80歳髪真っ白のじっちゃんばっちゃん達の疲れ果てた逃走劇も辛い。高速で世代交代する『百年の孤独』とは真逆。次作『グリーン・マーズ』では、ヒロインが130歳になっているらしい。ひー!