夜空と陸とのすきま

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フリーランチの時代/小川一水

人類が何かと融合し新しいフェーズに入る「幼年期の終わり」ものジャンルの短編集。

もう食べなくてもいい、不老不死、肉体がなくても意識と義体で生きる等。

考えてみれば、今回のコロナ禍によって変異株に素早く対応できるワクチン開発技術が進み、待ったなしの温暖化と原油価格高騰から、サスティナブルな自然エネルギー開発が進み、コオロギを試食しだしと、現実世界も徐々に新しいフェーズに入ってきてはいるんだよなあと想い馳せながら読みました。2008年に発刊の短編集なんだけど、女性登場人物の考え方も今では古臭く感じるくらいで、ほんとに世界は目まぐるしく変わってゆく。

 

■フリーランチの時代

火星でエイリアンと融合し、地球に帰還してからの人類への感染の速さに笑う。銀河市民になるのは幸せそう。

 

■Live me Me

不遇な事故で植物人間状態になった女性が、意識だけになり義体で生きる話。技術的な裏付けの描写が細かくて面白い。並行して読み進めている中国SF本にも同じ展開の話があって、そちらは意識だけになってから先が悪夢のようなことになっていた。

 

■Slowlife in Starship

太陽系を走る孤独な宇宙船、独り身のなんでも屋の話。きっとアニメ声なんだろうなーと想像するAIミヨを相棒に、ニートな主人公が宇宙開発のレガシーに関わり、少し改心するええ話。

 

■千歳の坂も

いつの間にか不老不死になってしまった人類の戸惑いを描く話。最後は安楽死を選んだゴダールに想いを馳せました。

 

■アルワラの潮の音

なんかこれって積読棚に置いてある小川さんの『時砂の王』のスピンオフじゃね?って思ったら当たってた。読んでいる時の脳内イメージは『モアナと伝説の海』×『アバター』でした。