夜空と陸とのすきま

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嘘と正典/小川 哲

 

嘘と正典

嘘と正典

 

日本SF大賞受賞『ゲームの王国』の小川哲氏短篇集。父と子の関係と時間SFの融合が多かった。小川氏の書く小説の色味の少ない冷めた視線、でも重量感があるとこ好きです。

 

■魔術師
お父ちゃん不器用すぎて伝え方下手でも、娘よくぞ辿り着いたその1。天才マジシャン親子の物語。時間SFなんだけど、最後に話を見失ってしまいました。


■ひとすじの光
父の残した競走馬と家系の謎解き物語。ひょっとすると私小説だったりするのだろうか?お父ちゃん不器用すぎて伝え方下手でも、息子よくぞ辿り着いたその1。これだけSF設定なし。

 

■ムジカ・ムンダーナ
人間の耳には聴こえないけれど宇宙に鳴り響いている遠い音楽と作曲家親子のお話。お父ちゃん不器用すぎて伝え方下手でも、息子よくぞ辿り着いたその2。宇宙の音楽と惑星探査船ボイジャーを絡めるところとか壮大でカッコいい。

 

■最後の不良
流行が許されない近未来で、特攻服に改造バイクで反抗する男の話。どこかで読んだような気がすると既視感があったけど、雑誌「pen」での「SF絶対主義」特集号の時に書き下ろされてた短編でした。個性と没個性の関係は紙一重

 

■嘘と正典
米ソのスパイ大作戦+時間SF。表紙がなぜ カール・マルクスなのかは、この表題作「嘘と正典」でマルクスエンゲルスに触れるから。最初はとっつきにくかったけれど、後半は映画「テネット」のような時間軸をめぐるスリルがあって面白かったです。