夜空と陸とのすきま

ゆるいSF脳。SF小説1000本ノックを目指しています

宇宙の戦士/ロバート・A・ハインライン

宇宙の戦士〔新訳版〕(ハヤカワ文庫SF)

新訳版が絶賛発売中ですが、矢野徹氏の旧訳を読みました。古本屋で購入した文庫はカバーに「スターシップトゥルーパーズ」映画化原作とでっかく書かれていて、バーホーベン監督のヤバイ映画が作られた時に重版したやつらしい。あの映画はバグ(虫)と戦っていて、見ろ人が虫のようだと言わんばかりに飛び散って死にまくるエグい映画でした…。

さて原作の方は、バグ型異星生物の侵略を阻止するため、パワードスーツに乗り込み戦う歩兵のお話。幼なじみと初恋女子が入隊するっていうんで、つられて軍隊に入り、ブートキャンプでしごかれ実戦を潜り抜け、士官候補生になり愚連隊を指揮するまでの青年の成長物語。

ブートキャンプでの教官とのやり取りがマッチョなハインライン節全開で、道徳・モラル大事、全体主義社会万歳と「うわあぁ…ハインラインあかんわ」って感想しかないんですが、バーホーベン監督の映画では、この原作をかなり皮肉ったオチにしたのね。映画の方はいつのまにか続編が4作も作られている…。

主人公がハイスクールの時は数学が苦手だったけど、士官学校で数学を学び直すところは良かったです。人生はいつでも学び直せる!

 

ガンダム』のモビルスーツに影響を与えたパワードスーツ。どちらかというと『ボトムズ』のイメージで読みました。

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次は書いたら左翼と言われた『月は無慈悲な夜の女王』いってみよー。

メモリークエスト/高野秀行

メモリークエスト (幻冬舎文庫)

単行本で読む。昔旅行で出会ったあの人は今…などの探して欲しい人の依頼を一般から募集して、辺境探検家高野秀行氏が少ない手がかりを元に会いに行くという企画本。1ヶ月間五カ国で5つのミッション完了。幻冬舎から出ている高野さんの本はこれだけなのかな。ウチにある幻冬舎の本もこれだけ。

●5年前に山奥で出会ったスーパー小学生を探して(タイ)

●日本へ行った時の身元保証人を探していた若者を探して(タイ)

●膨大な量の春画をコレクションしていた土産物屋のおやぢを探して(セーシェル

喜望峰で会ったツアーガイドを探して(南アフリカ共和国

●ユーゴ内戦で音信不通になった友だちを探して(セルビア

このチョイス無理じゃねと思うけど、自称「探索のプロ」高野氏も絶望と歓喜を繰り返しながら奇跡がおきて見つかってしまうのです。世界中の人間は、「知り合いの知り合い」といった関係をたどっていくと、5人の仲介者を経て6人目でつながるという「6次の隔たり」を体現するかのよう。

ただの人探しだけでなく、その国の政治・民族的背景も紹介されているので読み応えがありました。タイ人のクラクションを鳴らさない思いやりとやさしさに感心し、ルワンダコンゴの難民事情、戦数百年以上も戦国時代が続いているバルカン半島がとてもわかりやすかった。

高木徹の『戦争広告代理店』を読んでみたい本メモに追加。

荒潮/陳楸帆

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ゴミの島のリサイクル利権をめぐって、海外の組織と地元御三家の争いからのアジアン・サイバーパンクなお話。

電子ゴミから資源を探す最下層民”ゴミ人”の少女、米米(ミーミー)を軸に、リサイクルゴミの闇や格差社会貧困層と富裕層との対立、義手やらチップやらサイバーパンク盛り盛りで、とても勢いがあって面白かったです。ストーリーは面白かったんだけど、米米ちゃんが弄られすぎてかわいそうだった。

この物語に出てきて初めて知ったことですが、中国のネット検閲の表示コードが451で、ブラッドベリの『華氏451』=焚書から引用されているってすごい皮肉ですね。

タイトル「荒潮」の意味も、そっからきたネーミングか!と驚く。中国SFは伝統的文化との融合度が高くて嬉しくなってにやけてしまう。SFと文化の融合と言えば、無縁仏の墓地に放置されていて道教の呪符と仏教の数珠がかけられているアレに乗りこんで、「こいつ、動くぞ!」的な展開になるとこも最高だ!

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パラークシの記憶/マイクル・コーニイ

パラークシの記憶 (河出文庫)

 前作『ハローサマー、グッドバイ』を読み終えてすぐにネット中古本をポチって買ったら、届いた文庫がタバコ臭い…本を開く度にむぅん〜と臭う。前の持ち主さんは大分ヘビースモーカーですね…。ネット購入失敗したわぁ。

同じ惑星でも前作の登場人物が伝説になっているくらい、世代交代が進んだのちの続き。ということで『ハローサマー』のネタバレから始まるので、前作から読むがよろし。

世代交代が進んだことで、新たなスキルが追加された地球人によく似た異星人(スティルク人)。今回は先祖の知識が遺伝し、星夢という夢を見ることで祖先の体験と知識が伝授できるという設定。チートですがな。

訳者あとがきによると、コーニイ作品の傑作のお約束らしい
1.主人公と美少女が一目惚れ
2.帆のある舟が沈む
3.だいどんでんがえし
の3つが備わっています。だそうですが、今回はこれに殺人ミステリが追加されています。前作で謎は謎のままにしていた設定を、続編の後付けでいちいち追加していっている感じでした。

2作ともに登場する(私はイエティとアルパカをイメージして読んでいた)「ロリン」という生き物達に癒やされます。ロリンが出てくるとほっとする。一番魅力的なのはロリンだな。

 

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この世界のさらにいくつもの片隅に

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ようやく地元の映画館に来てくれたので、さっそく観に行きました。同じ列に座ったおじさんが、おもむろにアルコール除菌スプレーを取り出し、せっせと座席の除菌をし始めてびっくり。

前作『この世界の片隅に』に30分追加した長尺版。全く違う映画になっていてすごい。追加されたシーンは枕崎台風など笑うシーンが多かったせいか、前作の緊迫感・悲壮感よりかは、ほんわかした映画になった気がします。リンさんとの会話シーンも、あんなにゆっくりした尺で入るとは思わなかった。片瀬監督上手いな〜と唸るばかり。

また北條父の職場工場、戦闘機を作るシーンも追加されていて、うなる誉エンジンがカッコいい。ほんわかしたタッチの画風に突如リアルな着弾や戦艦、エンジンという鉄の塊をぶっ込んでくるのが怖ろしい。そして個々のキャラクターをさらに深く掘り下げて細かく描いてました。

今回見て新たに気が付いたのは、アニメでは顔に冷や汗を描かないんだなーというところと、江波の実家の部屋と、北條家の裁縫箱の隣にアレがあったこと。アレとは、私が祖母の遺品で譲り受けた折りたたみ式の裁縫台(正式名がわからない…)

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↑こうゆうやつ

見つけたときはちょっと嬉しかったです。ちなみに祖母のは裏に着物の裁ち切り図が載っていて、

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女学校の裁縫の教科書だったんじゃないかとも思う。小道具にすずさんと同世代の祖母を垣間見る思いです。 

 

 

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