夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

ディファレンス・エンジン/ウィリアム・ギブスン ブルース・スターリング

ブログを細々と10年以上続けて、アクセス数なんてあったりなかったりだったのに、昨日からいきなりいいねをたくさんいただき、読者数も増えて大変驚いております。どうやら、はてなブログのTOPページの編集部おすすめに紹介されたようで、なぜこんな底辺ブログが??と困惑しつつ、新しく読者登録された皆様どうもありがとうございます。ほぼSF本感想を綴る備忘録ブログでございます。SF語るなら千冊、2千冊読めといわれているところでまだ300冊にも達していません。そして科学や物理学に絶望的に無知なものでさっぱり理解できていません。あかんやつです。でもSFは奇想天外で面白くて大好きです。こんなふつつかなブログですがよろしくお願いいたします。

さてさて、今回はスチームパンクの名作と謳われる『ディファレンス・エンジン』を手に取りました。十三不塔の『ヴィンダウス・エンジン』、伊藤計劃の『The Indifference Engine』と読んできて、ようやくご本家にたどり着きました。

派生本も多いから影響力があって面白いんだろうなとワクワクしながら読み始めたのですが、ギブスンとスターリングの合作に黒丸尚のスタイリッシュな翻訳がどうにもこうにも読みにくく、寝落ちしながらなんとか下巻まで。

下巻の後半になって巻末に「差分辞典」なる付録を見つけて、ここに詳細な解説があるんじゃん!と気が付いたものの、いまさら「固有名詞がよくわからん」と読み飛ばした上巻を読み返す気力も起きず。

1855年のネオビクトリア朝ロンドンやパラレルアメリカ大陸が舞台。蒸気機関が異様に発達し、コンピューターも蒸気で動かす歴史改変SF。蒸気蒸気なのでロンドンの気候も変化していて泥まみれ。とても不潔でたまにエロい。

革命家の娘で娼婦のシビルの物語、恐竜学者マロニーの冒険奇譚(かなりエンタメ)と続いて、英国スパイのオリファントと主人公を変えつつ世界を飛び回り、モーダスとは何ぞやと謎に迫る。レイヤーがいくつも張り巡らされ、凝った作りに感心はします。ようわからんけど世界観が魅力的なところは、士郎正宗の漫画に似ている気がする。カルトな人気作品は、一度読んだだけでは把握できないほど難解で世界観が独特じゃなきゃダメなんだろうなと思いました。

天体の回転について/小林泰三

 

宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』を観て、タイトル元ネタの吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を読んで、小林泰三のコペル君とはいかがなものかと『天体の回転について』に行き着く。表題作はコペル君らしき無垢な少年が主人公。表紙絵が初音ミクの絵師KEI氏。この表紙につられて買った人っているのか?SFホラーでグロの小林泰三だぞ。さらに嚙み合わない対話文てんこ盛りだし、ハヤカワいけずすぎるだろう。

■天体の回転について

というわけで表紙絵の萌えキャラは、軌道エレベーターのエレベーターガールのリーナちゃんでした。可愛い♥萌えとニュートン力学の組み合わせ。軌道エレベーターって実際に乗るとどういう感じになるのか大変勉強になりました。誰か映像化してほしい。

 

■灰色の車輪

アシモフのロボット三原則の裏を突いたロボットの逆襲。博士とロボットのやり取りが、とてもとても手塚治虫。

 

■あの日

知ったかぶりで小説を書く、突っ込まれるの繰り返し。見事にオチをつけていて素晴らしい。

 

■性交体験者

とてもエログロいので、ああ小林泰三だと思う。モデルはカマキリですかね。アシモフの『神々自身』はパスすること(覚書き)

 

■銀の舟

幼いころにテレビで観た無人の惑星に写る人面石の謎を解くために、宇宙へはばたく少女の物語。全体的に最初に読んでいた印象と逆のオチに導かれる短編集です。

 

■三〇〇万

こんなファーストコンタクトは嫌だ小説。テラ星(地球だと思う)を襲ってくる異星人が野蛮な古代ローマ軍みたいだったら。グロくてナンセンス。

 

■盗まれた昨日

長期記憶ができなくなり、メモリに頼らざるを得ない未来の話。いつのまにかミステリーになる。

 

■時空争奪

『revisions リヴィジョンズ 時間SFアンソロジー』にも収録されていたので再読。これもいつの間にか宇宙論へ誘導される道筋がお見事です。

 

 

 

 

MASTERゴンザレスのクレイジー考古学[増補改訂版]

TBS番組「クレイジージャーニー」やYouTubeでおなじみの裏社会ジャーナリスト丸山ゴンザレスが、考古学専攻だった学生時代を振り返りながら裏社会と考古学を融合させた「ハイブリッド考古学」の実証に挑むエッセイ。

漫画「MASTERキートン」にあこがれて考古学を専攻なんて同世代~。ちなみに私は高校時代に金沢大学の水中考古学に惹かれてまして、海+スキューバダイビング+考古学って大好きなものの融合じゃんと思ったのです(全く学力が足りず断念)。本書では考古学専攻が何を学ぶのかが描かれていてよかった。とにかく発掘現場、現場で学べと専門技術職なんですね。

この本の目玉は、長年裏社会を見てきたゴンザレスが、盗掘者視線から大阪府の遺跡を見て回る話でした。別視点からの観察がこんなに面白いとは!あと、新宿歌舞伎町は地主関係がダークすぎて遺跡は未発掘とか。そういう話はゴンザレスしかできないから、もっと書いてほしい。

セルフビルドの世界 家やまちは自分で作る/石山修武・中里和人

手作りの家30物件の紹介本。「ナニコレ珍百景」でも紹介されていたかもしれない物件だらけ。それは0~500万円で建てた家、松浦武四郎の一畳敷、磯崎新の隠れ家、中古車のトヨエースに2階建て住宅を建てて日本一周、庭や玄関に怪しいオブジェが乱立する偏執的アウトサイダー・アートな家など。

出発点は「秘密基地」、男子の夢、からの地球のリメイクまで訥々と語るまえがきが一番心に響きました。

2008年の単行本刊行時はまだまだセルフビルド(自己表現としての生活術)を奨励する自由さが垣間見えた感じが、20年近く経つと絶滅危惧に。しかし中東危機でこのまま石油ショックが続けば、自分で作るしかないセルフビルドの世界が日常に戻ってくるのではないかなど思っていたので、このドンピシャな本との出会いに感謝。私は居心地のいいカオスな部屋を作りたい。

自分で作るが一番面白いし楽しいんですよ、人生は長い暇つぶし。

それらアニマが漂うのは不可思議な既成概念にオートマチックに身を任さない自律した知の存在であり、消費のシャワーを拭い去って自らの意思で世界を構築しようとする力である。

 

The Indifference Engine/伊藤計劃

伊藤計畫関連の本は同時期にブワッと出版されて内容もかぶっているで、商売根性たくましいのうと思いました。これもそんな時期に出た短編集。ブログから同人誌から漫画に解説文までとかき集めた様相。でもファンなら揃えちゃいますよね。

 

■女王陛下の所有物

ムサビ漫研の同人誌。007シリーズのパスティーシュ、その1。

 

■The Indifference Engine

少年兵の苦しみ。読んでいてお腹が痛くなるほどリアル。同じく誘拐されて少年兵になりストームトルーパーからヒーローになっていったstar warsのフィンみたいにはならないのだろうか。

 

■Heavenscape

『虐殺器官』の叩き台みたいな感じ。

 

■フォックスの葬送

ゲーム「メタルギア」のスピンオフなので、このゲームがさっぱりわからない身としてはへぇな感じ。でもメタルギアファンなら、これが収録だけで買いなんだろうとは思う。

 

■セカイ、蛮族、ぼく。

同人誌作品はだいぶはっちゃけてる。が、女性が読むと気分を害する話ではある。

 

■A.T.D:Automatic Death■EPISODE:0

漫画。伊藤計劃はムサビの映像学科卒なので、コマ割りとかアングルがうまい。なんでもできる人。

 

■From the Nothing,Wich Love.

007シリーズのパスティーシュ、その2。この短編集の中では一番完成度が高くて面白かった。満足。

 

■解説

ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングのSF小説『ディファレンス・エンジン』新装版の解説文。さっぱりわからないので、今ディファレンス・エンジンを読んでいる。

 

■屍者の帝国

冒頭21ページまでを書いて絶筆、遺稿。伊藤計劃は『ディファレンス・エンジン』がマイフェイバリットだったそうで、影響がとてもよく見て取れる。