夜空と陸とのすきま

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日本SFの臨界点[恋愛編]死んだ恋人からの手紙/伴名 練 編

 

 恋愛要素を含めた短篇集未収録作品を中心に編成した9篇のアンソロジー。編者伴名氏のSF愛に満ちた独特の視点が面白いし、それぞれの短編の前に作品と作家紹介が細かい字で3ページもあって、SFマガジンに掲載されたけど単行本文庫未収録って多いんだなと。そこまで細かく調べ上げてくる伴名氏のオタクぶりに恐れおののく。こんなに隠れた名作があるなら、ネット上でアーカイブ&有料閲覧できるといいですね。

 

■死んだ恋人からの手紙/中井紀夫
星間戦争の兵士が故郷の恋人に送る時系列がバラバラの手紙。俺、帰ったら結婚するんだ…って、死亡フラグが立ってる立ってる!

 

■奇跡の石/藤田雅矢
東欧の小国で超能力者達が住む村に調査に訪れた主人公が出会ったのはというお話。なんとなく坂口 尚や藤原カムイが描く漫画(となると元はメビウスか?)の雰囲気を感じました。日本のSF小説っていつも脳内で漫画かアニメになってしまう。必ず少女が出てくるからかな。

 

■劇画・セカイ系大樹連司
売れないライトノベル作家のお話。これは仕掛けが面白かったけど、最後に主人公が選択した道があまりにも現実的過ぎてせつない。セカイ系+売れる商業・売れない芸術。

 

G線上のアリア高野史緒
16世紀ヨーロッパが舞台なんだけど改変歴史モノ。GってそっちのGかいっ!と、中世にもしもデジタルが発達していたらの妄想が楽しい。

 

■人生、信号街ち/小田雅久仁

信号待ちをしていた男女2人が空間に閉じ込められてというお話。ワンダーなSFが編者の伴名氏の作風で好みなんですね。ひ孫まで順調に生まれる人生うらやましい。

 

■ムーンシャイン/円城 塔
円城さんのはったり数学SFだ〜!全然わかんないし、「恒河沙」って字を久しぶりに見た。ゼロ何個の桁数でしたっけ?脳内でアラン・チューリングが自転車漕いで去っていきました。

 

■月を買った御婦人/新城カズマ
19世紀メキシコの竹取物語人海戦術で0と1に分かれて演算するって、劉慈欣『円』に出てくる面白いアイデアだと思っていたのに、それよりも前からあったとは衝撃。