夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

ロシア・ソビエトSF傑作集 上・下/オドエフスキー、ベリヤーエフ他

ロシアによるウクライナ侵攻、毎日のニュースで気を揉むばかりですが、本当に早く戦争が終わってほしい。じわじわと締め付けられていく感じが辛い。

ロシアは憎いけど、だからといって大学でロシア語を教えるなとか、案内板からロシア語を削除しろとかいうのは間違っていると思う。革命で反体制側につき弾圧された作家や芸術家達も素晴らしい作品を作っているんだし。ロシア語がわからないと読めないんだし。ロシア語は悪くない。

そういうわけで『ロシア・ソビエトSF傑作集』を積ん読箱からひっぱりだして読みました。ありがたいことに日本語訳。1840〜1938年、ロシア革命前より第二次世界大戦あたりの短編なので古典SFです。

上巻はまだSFとはいえないような、ほのぼのとしたタイムスリップもの(ウラジミール・ф・オドエフスキー『四三三八年』)から、火星で革命をやる話(アレクサンドル・A・ボグダーノフ『技師メンニ』)など。別に火星でなくてもよくね?とは思いつつ、火星設定を除けば、世代を渡る大河ドラマっぽくってセリフもかなり熱い。

下巻はマッドサイエンティストがわらわら出てくるので面白い。量産・巨大化する光線を発明してゴジラ映画みたいな話(ミハイル・ブルガーコフ『運命の卵』)、アマゾン川でサバイバル人生を送る博士の話で一番楽しかった話(ミハイル・ブルガーコフ『髑髏蛾』)、ユーモアSFと謳っているのに、どうしてロシアSFはいつも悲劇で終わるのかと思う話(ゲ・グレブネフ『危険な発明』)など。

上下巻ともに論文のように詳しい訳者・深見 弾氏による巻末解説が素晴らしくって、ロシアSFの特徴もわかりました。でも宇宙ものも多いって書いているなら、もっと宇宙ものを入れて欲しかった。