夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

火星転移/グレッグ・ベア

昨年末に逝去されたグレッグ・ベア。春先から電子書籍などで復刊ラッシュです。自分にとっての初ベア作品は、以前買っておいた長編を積読棚から取り出して読みました。

「ベアはしばしば、虚構の解決策によって現代科学や文化の大きな問題に対処するという形の作品を書く。」(Wikipediaより)という、ハッタリをかますSFならではの作風。

『火星転移』は、オチがタイトルまんまですが、火星移住から100年後(22世紀後半)に、のちに火星の大統領となるキャシーアが晩年に書いた回顧録の形をとり、学生から秘書官そして政治家になっていく女性の成長物語。物理学者チャールズが発見した粒子間の情報交換ができる「ベル連続体理論」が肝ですが、それが架空の物理学だけど、いかにもありそうな説得力が嘘も方便で面白かったです。

まだAIという言葉がなかったのか思考体という表現のロボットのアリスも可愛い。

一番好きなキャラはSPのダンディ・ブレイカーです。後半のイナゴ戦は手に汗握るバトルでした。

今年になってから火星SFをよく読んでいるけれど、火星はだいたい地球と戦争になるのね。