夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

スノウ・クラッシュ/ニール・スティーヴンスン

数年前に某古書チェーン店で『スノウ・クラッシュ 上』を110円棚でみかけまして、『7人のイブ』のスティーヴンスンだから絶対面白いんだろうけど、下巻がなかったので買うのをあきらめました。それが昨年、メタヴァースの流行の兆しによって元ネタ本と話題になり、表紙も新たに復刊してくれたのでようやく購入。旧版はせどりさんたちによって?ネットでの古本価格がみるみる上昇してて驚きました。

物語はアメリ連邦政府が無力化して、それぞれマフィアや資本家によるフランチャイズ国家に分裂した近未来。オンライン上の仮想空間「メタヴァース」と現実世界で「スノウ・クラッシュ」なる謎のウィルスがばらまかれ…というお話。

主人公ヒロ・プロタゴニストは在日韓国人の母とアフリカ系アメリカ人の父との間に生まれ。日本刀と脇差を携帯し、常にVRゴーグルをかけたドレッドヘアの凄腕ハッカー&ピザ宅配人で最強剣士。

主人公像をここに書きだすだけで情報量多!ですが、(名前がヒーロー・主人公ってw)本文も細かい設定と原書刊行が30年前なのに今でも斬新なアイデア、仮想空間と現実を行ったり来たり、さらに古代シュメール神話と言語SFの要素も入れてきててんこ盛り。完全映画化するとしたら、ずっと説明や解説を入れるか、見る人のリテラシーが高くないと難しい。逆に映像化だからと言って簡素にして削りまくったら魅力が失せるんだろうなぁ。『レディ・プレイヤー1』みたいな感じだろうと読み始めたけど、さらに深い深い。

古代シュメール語のメ(脳に直接作用する神経言語)=古代宗教をウイルスと位置づけ、このメを崩壊させることによって(バベルの塔)、人々の言語は多様化し自意識が芽生えたという解釈や、それを仮想空間の構築やバイナリ・コードにも持ってくるあたりがしびれました。

また読み返したいので、グラシン紙代わりにクッキングシートでカバーを作って本棚へ。