夜空と陸とのすきま

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地球はプレイン・ヨーグルト/梶尾真治

何かのSF短編集の解説で『地球はプレイン・ヨーグルト』のタイトルが載っていて、ずっと気になっていた本です。古本屋で見かけたときはガッツポーズをとってしまった。なぜかフィルムカバーがしてあって、図書館のリサイクル本だったのかなぁ。

梶尾真治といえば、漫画家鶴田謙二と組んだ『エマノン』シリーズや、映画になった『黄泉がえり』と秀作の多い作家さん。本書巻末掲載の星新一による解説もベタ褒めでした。

フランケンシュタインの方程式

SFで「方程式」とつけば、だいたいトム・ゴドウィンの『冷たい方程式』のパロディ。「方程式もの」というジャンルまであるという。あの作品のインパクトはすごかったんだなと思います。オチもいっしょなパロディですが、ブラック企業が日本的。

■美亜へ贈る真珠

著者のデビュー作。異なる時の流れに分かれた男女の哀惜の物語。「私の人生は、何だったのでしょう」っていうのはもうホラーです。愛されていたのかどうかなんて、生きているうちにわからないと何も報われない。

■清太郎出初式

この話が一番面白かった。H・G・ウエルズの『宇宙戦争』で火星人が侵略してきた西暦1900年。明治33年当時の日本の熊本県にも火星人は襲来したのだ!という出だし。カリスマ鳶職の息子なのに”阿呆ぼん”な清太郎が、火星人に破壊されつくした熊本城下で生き延びた人々と逃げ惑う話。火星人の破壊兵器トライポッドと鳶職との戦い。

■詩帆が去る夏

『おもいでエマノン』もそうなので、リリシズム+女の子は梶尾さんの十八番なんだろう。もう手が届かない俺の永遠の女神さま設定は、なんでもエヴァのゲンドウが頭に浮かんで困ってしまう。

■地球はプレイン・ヨーグルト

味覚でコミュニケーションをとるファーストコンタクトもの。軽いテンポで進むけれど、地球にただ一人残された宇宙人があまりにも哀れすぎるので後味悪い〜。あの老人きもい。