夜空と陸とのすきま

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円 劉 慈欣 短篇集

先月『アメトーーク!』で読書芸人特集があり、紹介された本が売れに売れて、Amazonでは劉 慈欣『三体』が品切れになったそうです。アメトークすごいね!読書芸人は3ヶ月スパンでやったら出版界喜ぶんじゃないの。『三体』が分厚すぎて気後れしている人にはぜひこちらの劉 慈欣短篇集をオススメします。これはかなりの傑作揃い!図書館で借りちゃったんだけど、近々買って手もとに置いておきたい。

■鯨歌
デビュー作なんだけど最初からハイレベルで驚く。シロナガスクジラの口の中に入って麻薬の密輸売買の話。大掛かりでロマンがあって、でも因果応報なオチ。

 

■地火
これを読みたかったから去年出たハヤカワの『2000年代海外SF傑作選』を買ったんだけど、まあいいや。小松左京風味の強い実録プロジェクトX・炭鉱労働者VS地球。ずっと『地上の星』がリフレインします。

 

■郷村教師
Twitterでこの短篇集を読んだ人が『郷村教師』がすごいすごいとつぶやくので、楽しみにしていました。いやこれは絶句。貧しい農村から宇宙帝国に話が飛ぶところとか、すぐに誰かにプレゼンしたくなりますね。「教師…だと!?」

 

■カオスの蝶
これもすごい話なんだよ!としゃべりたくなる傑作(実際、娘に熱く語ってしまった)。家族愛に涙しながら、祖国を空爆から救うためのミッション・インポッシブルが破天荒すぎて、でもあり得そうという説得力があるのが不思議。

 

■詩雲
中国系作家は芸術文化・文字(漢字)にかかわるSFが魅力的でとても面白い。ケン・リュウテッド・チャンに負けず、劉 慈欣は李白ときましたよ。宇宙人と漢詩の話。

 

■栄光と夢
オリンピックってぶっちゃけ代理戦争だよね、をそのままお話にした短篇。マラソン選手シニに感情移入しちゃうとワンワン泣けます。ビル・ゲイツがしれっと出てくる。

 

■円円のシャボン玉
幼い頃の大好きを伸ばしていくとこんな素敵な物語に。義務教育で将来の夢を持つことを強制させるなら、この物語を教科書に載せて、大好きを貫く子に育ててほしい。

 

■人生
母親の記憶が胎児に受け継がれる話。それは胎児にとっては酷なこと。

 

■円
中国の人海戦術は計り知れない。再読4回目でも面白い。