夜空と陸とのすきま

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ビンティ ー調和師の旅立ちー /ンネディ・オコラフォー

ヒンバ族の調和師ビンティが、銀河系のウウムザ大学に入学しようと宇宙に旅立ったら、異星種族メデュースに襲われる事件に巻き込まれてというお話。

宇宙に旅立つ第一部、故郷に帰る第二部、そして紛争に巻き込まれる第三部の構成。第一部で全乗員を皆殺しにしたクラゲ型異星人メデュースの若者オクゥと、いつのまにか大親友になっちゃうあたりで共感できずついていけなくなるけれど、そこを我慢して読み進めると、調和師として才能を現していくビンティの成長が面白くなってきます。徐々に明らかになっていくビンティのアイデンティティもすごいし、さらに結びつく。みんな、第一部は我慢だ!

魔法使いや錬金術師のような立ち位置で、呪文ならぬ数理フローを説いて集中する調和師。無意識に行う行為を出産と同じだと表現したところは唸りました。確かに出産時は女性ホルモンと赤子に身体が支配されている感じ。

五歳のとき、赤ちゃんを産むってどんなものなのか母にたずねたことがある。母はほほえみ、一歩引いて自分の身体を譲りわたす行為だと答えた。出産とは、人体が無意識に行なう数かぎりない反応のひとつにすぎないのだという。(P207)

争いを治める調和師。ナウシカに近いSFでした。