夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

JM/Johnny Mnemonic

ウィリアム・ギブスンの短篇『記憶屋ジョニイ』の映画化。脳の一部を電子化し、ストレージにデータを保存して運ぶジョニーをキアヌ・リーブス。データを追うヤクザの親玉タカハシを北野武が演じる。

1995年当時はかなり話題にはなったものの、予告編などで人間が輪切りになったり、割と血まみれだったのが怖くて、映画館に足を運ばなかったような気がします。今見るとたいしたえぐさでもない…大人になったなぁ私。監督さんが現代アートの人なので、衣装やボディメイク、構図やカメラの傾きなどにこだわりを感じましたが、アクションがドタバタしていてスマートではなかったのが残念。この後の『マトリックス』に繋がるギブスンワールドの映像美と世界観の土台を作りあげた感じでした。

色々つっこむところも多くて(タカハシとシンジは特に!)見ていて楽しかったです。後半出てくる殺し屋カール牧師の拷問シーンとか小道具がヤバイ。キャラクター描写がとても良くて、ジョニー(キアヌ)のストレスが爆発して「清潔なベッドで寝たい!高級娼婦を抱きたい!洗濯したい!帝国ホテルのクリーニング…東京の!」と叫ぶシーンとか最高に良かった。帝国ホテルうんぬんはアドリブだったそうで、キアヌいいやつだ。男女ともに肩パット入り大きめのスーツで時代を感じて懐かしかった。

クローム襲撃/ウィリアム・ギブスン

ウィリアム・ギブスン短篇集で、キアヌ・リーブス北野武が共演した映画『JM』の原作「記憶屋ジョニイ」収録。ハッカーやマフィア、電脳空間に暗黒街でヤクザと粋なサイバーパンクを味わえる全10篇。ブルース・スターリングのSF界に啖呵切ってる序文も面白い。

 

■記憶屋ジョニイ

ジョニイと言えば、「ジョニイへの伝言」じゃなくて、UAの曲「悲しみジョニー」を思い出す世代です。それはともかく、映画『JM』はまだ未見。昨日レンタルで借りてきた!
機密情報を頭に記録して運ぶ不正取引人ジョニイが、ヤバいプログラムを記録し、”ヤクザ”に追われ、若き日のモリイに助けられる話。会話文が全く理解できなくても、しびれるカッコよさがあるのは、ゴダールの映画っぽいな。

 

■ニュー・ローズ・ホテル
他の企業に引きぬかれるよりは死んでもらったほうがましと命を狙われる企業専属の科学者の逃亡を助ける"逃がし屋"の主人公という、ぐっとくる設定でつかみはOK。棺桶と訳されるカプセルホテル「ニュー・ローズ・ホテル」など、日本が舞台。歌舞伎町&横浜ハードボイル。90年代に映画化していて、ヒロシが天野嘉孝!日本企業の役員が坂本龍一だったらしい。なにそれ見てみたい。

 

ドッグファイト
マイクル・スワンウィック&ウィリアム・ギブスン共作。アーケードゲームの覇者を目指すデュークと天才プログラマーの女の子ナンスの物語。恋バナになるかと思いきや後味の悪い結末。でも小悪魔的なナンスが可愛い、可愛い過ぎる。この本の収録作の中で一番読みやすくてキャラが立っている。デュークは超最低!なんだアイツ。

 

■クローム襲撃

ニューロマンサー」、「記憶屋ジョニイ」、「ニュー・ローズ・ホテル」も、そして「クローム襲撃」も同じ世界軸線で"スプロール・シリーズ"と呼ばれるもの。作家が生み出した創造の世界が、ここまで設定に凝っていて、ガジェットが揃うと無敵。ギブスンがSF界に与えた衝撃の強さを感じながら読みました。

 

マッカンドルー航宙記/チャールズ・シェフィールド

昨年の秋は巣ごもり需要で雑誌各紙が本特集を組んでくれまして、この本は『pen』2020年11月号で、宇宙開発というテーマで宇宙機エンジニアの野田篤司氏が選書していて、気になったので入手しました。野田氏曰く「未来の宇宙開発を暗示している」「まさに宇宙は国家から民間へ、やがては個人の手に。」

折よくZOZO前園さんがISSに飛び立つ日が決まったそうで、まさに宇宙への道は開けてきたー!

さてさてタイトルどおり、太陽系随一の変人天才物理学者マッカンドルー博士と相棒のジーニー宇宙船船長の冒険航宙記という本書ですが、作者がガチ科学者なので、まあ設定も付録の科学的解説も細かい。よくわかんないけど映画『インターステラー』のブラックホールに突っ込むとか時間遅延あたりなんだろうと大雑把に解釈して読み進める。主役2人の掛け合い(夫婦漫才)が面白く、最高峰の知性が集まったペンローズ研究所も素敵だ。国家を超えて宇宙に飛び出す未来が見たいな。オッホ。

ニューロマンサー/ウィリアム・ギブスン

FacebookもMetaと社名を変え、メタバースの原点であるニール・スティーヴンスン著のSF小説スノウ・クラッシュ』も早川書房が近々復刊してくれるそうで、仮想空間キタコレ!な昨今。そもそものサイバースペースという言葉をインターネット普及前に産み出したサイバーパンクの元祖、1984年作の『ニューロマンサー』を始めとするウィリアム・ギブスンにまだ手をつけていないのはヤバしと、積ん読棚から引っ張り出しました。時系列的に短編集『クローム襲撃』から読んだ方が良かったのかな?

黒丸 尚氏のカッコいいんだけどクセのある和訳、何故セリフ末尾の「?」の代わりに「…(三点リーダー)」を使うのか、?マーク嫌いなのか。用語もルビ多すぎかつ説明が少なく、第二部で読むのを挫折。しばし日数を空けて最初から再チャレンジ。今度はWikipediaに書かれている「あらすじ・登場人物・ガジェット」に助けられて何とか読み終えました。Wikipediaがなかったらまた挫折していたと思います。

1984年当時よりコンピュータの知識がひろまり、映画『攻殻機動隊』や『マトリックス』などで電脳空間のイメージがあっても読みにくいのは確か。

最後の方でニューロマンサーが登場するシーンが、海辺の波打ち際というのが素敵でした。ソニー、サンヨー、日立とか、忍者に手裏剣に禅とJAPANな用語がわんさか出てくる所も嬉しい。

脳内イメージで女用心棒モリイは、草薙素子やトリニティよりも『ブラック・ラグーン』のレヴィに近かったです。

 

DUNE砂の惑星/Dune

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60年前のSF大河作品をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が再度映画化。キャッチコピーの「全宇宙」だと大風呂敷を広げすぎるから「銀河」ぐらいにしておけばいいのでは、などとツッコミたくなりました。

それはともかく映画の出来は最高!さすがドゥニ☆ヴィル監督。古参ファンが多く、何度も映像化した作品でもぐうの音もでない完成度だと自分は思いました。砂漠が、光が、色が美しい、とにかく美しい。大画面でええもんみせてもらいました。

ポールが逐一予知夢で未来をみて、今後の展開を教えてくれて、「ヒットして続編作れればこれが見られるよ、ヒットしなかったら作れないので、こういう大河シリーズなんだとご理解ください」と説明されているようで、どちらに転んでもいいような作り方がずるいです。

壮大な2時間半予告編を観た後に、続編決定の情報、嬉しい‼︎