タイトルと素敵な表紙の装画から勝手にSFだと思い込んで手に取りましたが全然違った。この不条理な世界をユーモアで笑う、イスラエルの文筆&映像作家のケレットの超短篇集。なかなかシュールで乾いた笑いを誘い、どうしようもなさが胸に沁みました。エミール・クストリッツァ監督の世界観に似ている。
■前の前の回におれが大砲からブッ放されたとき
サーカス団の清掃員が急遽代役で人間大砲になる話。アレな嗜好の目覚める瞬間?
■窓
記憶喪失になった男がリハビリするために住む部屋は、窓のない暗いワンルームだったという話。壁に写しだされる映像が…。無感情なアンドロイドとのやり取りも怖い話でした。
■GooDeed
善行を施す機会を探すアプリの話。Facebookのマーク・ザッカーバーグが出てきた。富める者も貧しい者も出会いに恵まれて幸せだ。
■ブリザードン
トランプ大統領が三期目に入った近未来。戦場に配置されたポケモンGOならぬピトモンGOのレアをゲットしたいがために、オーバー14部隊に志願した少年兵の話。この無邪気な幼さで世界中の戦場を駆け巡るシュール。
ユーモアとは耐えがたい現実とつきあう手段なのです。抗議する手段でもあり、ときには人間の尊厳を守る手段でもあります。やりたくないことをやらなければいけないとき、ユーモアをもつことは「ほら、まだおれは人間だぜ」と言っているのと同じなのです。