夜空と陸とのすきま

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ベストSF2020/大森望 編

 

べストSF2020 (竹書房文庫)

べストSF2020 (竹書房文庫)

  • 発売日: 2020/07/30
  • メディア: 文庫
 

 東京創元SF文庫から毎年出ていた「年刊日本SF傑作選」が大人の事情で終了したらしく、この度リニューアルして竹書房文庫にお引っ越し。創元版と同じく各短編のはじめに編者による作品解説と著者の紹介、おわりに著者の”あとがき”が追加されているのが嬉しい。そして後記についてる「2019年日本SF概状」もすごい情報量。これ全部追っかけて読んでいくのは大変だ。

 

■歌束/円城 塔
円城氏のはったり振りはすごい(『文字渦』の単行本を入手したけどまだ積ん読中で、いつのまにか文庫化してた)歌にお湯を注いで漉してとか、歌を上手く淹れるなんてことをいけしゃあしゃあと書いてる、なぜか「そっかー」と納得してしまう。

 

年金生活岸本佐知子
翻訳家の岸本氏と柴田氏が訳した海外文学にはずれなし!と思っていますが、その岸本氏がSF短編を書くなんてびっくり。こんな<ねんきん>だといいなぁ。<戸棚の奥>にピリッと怖さを仕込むところとか、さすがです。

 

■平林君と魚の裔/オキシタケヒコ
大阪弁でしゃべる星間行商人女子と愉快な仲間の話。シリーズの第2弾らしいけど前作を未読でも大丈夫な内容。水中生物の進化した人類と異星人のカテゴリー分けが楽しかったです。

 

■トビンメの木陰/草上 仁
寄生生物のハリガネムシがカマキリを操っているような話なんだけど、それが銀河征服の覇王の物語になっているところが面白いなぁ。

 

■あざらしが丘/高山羽根子
ざらしの名を持つご当地アイドルがライブで捕鯨する話。「キル・ビル」のゴーゴー夕張みたいに強いアイドル…。

 

ミサイルマン/片瀬二郎
最終兵器外国人労働者。テンポよく読めたんだけど笑っていいのか謎の罪悪感が残る。

 

■色のない緑/陸 秋槎
AIによって生み出されるブラックボックスの話。いずれ訪れるであろう使う人間側がAIに使われる日。自動翻訳が普及すれば通訳や翻訳家はいらなくなるのかなどのテーマも興味津々なところをついてくるし、才女達のやりとりもそんなに百合っぽくない。<色のない緑>の小道具の扱い方に痺れた。