山本弘氏が長年愛読してきたSFマガジン掲載短篇SFからセレクション。あとがきによると今後も五冊出したいと意気込んでおられましたが、今のところ一冊目だけです(企画倒れなの?)。山本氏は長らく闘病生活を過ごされているようなので心配です。各短篇の解説のテンションが高く、『BISビブリオバトル部』シリーズの空ちゃんが嬉々としてプレゼンしている感があります。
■火星ノンストップ/ジャック・ウィリアムスン
火星に侵略してきた異星人が、火星には酸素が足りないということで、地球から大気を吸い上げて火星に送る機械を設置したため人類大ピンチ!吸い上げられる大気の渦に乗って、機械を破壊しに火星へGo!という、はちゃめちゃさがたまりません。主人公を助けてくれるロケットガールも可愛いぞ。
■時の脇道/マレイ・ラインスター
解説によると1934年発表のパラレルワールドの元祖らしい。街の大通りにバイキングやローマ帝国の師団が登場。なんとなく牧歌的に感じる。
■シャンブロウ/C・L・ムーア
C・L・ムーアの『大宇宙の魔女』収録作ですよね、新訳版は買ったけれど積んでます…。山本氏の解説はこれが一番面白かった。シャンブロウに心奪われた翻訳者達がそんなに大勢いたなんて(笑)。ウィンディーネやローレライ的な魅惑たっぷりな妖女の物語。
■わが名はジョー/ポール・アンダースン
以前他の短編集でも読んでいたので再読。読み返してみると描写は主人公中心ではなく、まわりの人の視点で進む物語だったんだなと気が付く。
■野獣の地下牢/A・E・ヴァン・ヴォクト
山本氏が解説で「ターミネーター2のT-1000そっくり!」って書いているから、もうロバート・パトリックにしか見えん。怪物愛を感じる作品。
■焦熱面横断/アラン・E・ナース
男苦しく暑苦しく水星を横断する物語。水星を征服するなんて人間には土台無理なことだったんだ!からのラストのセリフに「クーッ!」ってビールを煽りたくなりました。
■ラムダ・1/コリン・キャップ
ヴィンテージSF集なので、今現在の化学理論からはありえん設定ばかりですが、これは設定が一番際立っていました。超次元タウ空間を使って地球内部を貫通して移動する空間船が故障しちゃったよ、それに元妻が乗ってるらしいぜどうする物語。