夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

NOVA 2023年 夏号/大森 望 責任編集

定期的に出ている日本SF書き下ろしアンソロジーシリーズ。今号は日本SF史上初の女性作家のみだそうです。中国女性作家アンソロジー『走る赤』の影響か、今までなかったのがなんか意外でした。印象的だった短編の感想をちょっとだけ。

あるいは脂肪でいっぱいの宇宙/池澤春菜

何しても痩せないダイエット女子の物語。一番手は池澤元会長。もう面白くって笑いすぎて腹が捩れましたよ。娘に嬉々として内容を話したら、読みたいというので貸したところ、「ポルンの中の人がこんなの書いてるの⁈」とプリキュア世代らしい感想でした。魔法少女のアクキー、ニチアササイコーでずっと笑ってました。

 

セミの鳴く五月の部屋/高山羽根子

日常の中でRPG要素を入れてくる話。学生で一人暮らしをしていた頃、近所の小学生の女の子達とふとした縁で知り合い、私の部屋に遊びにきたことを思い出しました。ピンポーンと鳴らした時、ドアの新聞受けから覗き込んでいた時の彼女たちの顔。今も元気にしているかな。

 

さっき、誰かがぼくにさようならと言った/最果タヒ

愛を囁いて美しい琥珀を作る琥珀師の話。ここ数年は人気の日本文学を全くおっかけていないので(海外SFばかり読んでいるから)、最果タヒの名前は知っていたけれど、初めて文章を読んだのです。軽いんだけど繊細で表現力がある、詩人ならではですね。

 

シルエ/揚羽はな

不運な事故で脳死になった愛娘の代わりに、娘そっくりのアンドロイドと過ごす夫婦の話。悲しみは時間が癒してくれる、立ち直るまでそばに寄り添うのがアンドロイドというのもありだなと思えた。

 

犬魂の箱/吉羽善

子守ロボットを張子=使機神という時代小説風SF。設定が面白いので別の話も書いてほしい。

 

デュ先生なら右心房にいる/斧田小

先生よ、あんたの出番だ。「神無月だよ、先生」(鹿男あをによし)を思い出した。宇宙ロバも語り口も面白かったんだけど、途中で話が迷子になって、もう一度最初から読み返してもやっぱり迷子になって。地上に上がったあたりから。

 

ビスケット・エフェクト/勝山海百合

異星人との交流を取り持つのはビスケットだったという話。同著者の『あれは真珠といものかしら』と同じくほっこりする読後感を味わえた。