夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

海の鎖/ガードナー・R・ドゾワ他

行きつけの本屋で国書刊行会未来の文学>シリーズ完結フェアと称して、重版された本がずらずらっと並べられていて大興奮。この機会に『ゴーレム100乗』を購入するべきか真剣に悩む。まだ全巻読破できていないので、今後のお楽しみ。シリーズ最終巻は翻訳家の伊藤典夫セレクト8篇で、ネットのレビューを見て回ると、SFファンの先輩達のウンチクがたくさんあって、本書同様に楽しめました。

 

■神々の贈り物/レイモンド・F・ジョーンズ

宇宙人から超文明の宇宙船と案内ロボットをプレゼントされ、世界各国が取り合う話と、物理学者と軍人の私的な関係。地球の命運がかかっているのに、ララァの禍根でもめるシャアとアムロみたい…。

 

リトルボーイ再び/ブライアン・W・オールディス

終戦から百年の記念に、もう一度ヒロシマへ原爆を!という問題作。代表作の『地球の長い午後』でも、作中の女性に対する扱いにムカムカして読んだけど、これもまた酷いなと思ったらさらに原爆ネタとは。オールディス嫌いになりそう。当時の日本のSF作家陣が激おこで、オールディスが泣いて謝ったとかエピソードもすごいなあ。黒歴史な作品をあえてアンソロジーに入れるんですね、ひゃあ。

 

キング・コング堕ちてのち/フィリップ・ホセ・ファーマー

孫娘と祖父がキング・コングの映画を一緒に見ていて、「あの出来事は実は…」と思い出を語り出しという話。上手い!と呻る。祖父のほろ苦く怖い初恋もまた上手に絡んでいて。

 

フェルミと冬/フレデリック・ポール

突然始まった核戦争から、生き延びた人と核の冬を描く物語。冒頭の空港に避難者が殺到するシーンを読んでいたら、ニュースで流れたアフガニスタンの空港が!現実とリンクしすぎて辛い。なんというタイミング。

 

■海の鎖/ガードナー・R・ドゾワ

最後の表題作を読んで、大きなSF的な話のなかで主人公の私的な状況が同時に進行する物語が、訳者の好みなのかなと思いました。『海の鎖』は児童虐待の描写が辛いけれど、"新しいビジョン"には驚いた。