夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

さあ、気ちがいになりなさい/フレドリック・ブラウン

 早川書房が2005年から2007年までに出した異色作家短編集は装丁も素敵だし、サイズも手に取りやすくて色が可愛いくて、カバーを外しても可愛い。でも今から20巻を揃えるのは難しそう(意外と古書店では昭和版の方を見かける)。タイトルを最初に知ったのは施川ユウキの『バーナード嬢曰く。4』で、確かに美容院で読める本のタイトルではない。翻訳は星新一で、星新一のニヒルな感じが増しているような短篇。猛暑で頭がぼっーとしてる時に読み終えて特に感激もなかったけど、巻末解説の坂田靖子氏のハイテンションな文章につられてもう一度読み返して面白さがわかりました。

 

みどりの星

緑豊かな地球に帰りたい男の話。狂気!え、どこから狂ってたの?最初から!

 

■おそるべき坊や
サーカスの魔術師ガーバー大王の世界征服をハービー坊やがくいとめる話。阻止の仕方がやんちゃでかわゆい。

 

■電獣ヴァヴァリ
宇宙からの侵略者によって地球上の電気を食われてしまうんだけど、電気がない方がのどかで幸せそうな人類。脱成長コミュニズム

 

■ユーディの原理

いつの間にか小人さんが仕事をしてくれる話。いやしかし、オチがそうくるか。ずるいな…。

 

シリウス・ゼロ

テキ屋の一家が乗る船が未確認の新しい小惑星にたどり着く話。最初の2ページで登場人物に親しみがわくのがすごいと思う。とても人間くさい終わり方も好き。

 

■町を求む

893の話。ものすごく短いのに、腐敗や賄賂の的を射ていてしびれる。

 

■沈黙と叫び

田舎の小さな駅で、駅長と私の会話文。聞き手がいなければ音は存在するのかしないのか?という禅問答のような始まりから、ヒュッと空寒くなる農夫の存在感。