夜空と陸とのすきま

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未来医師/フィリップ・K・ディック

 

未来医師 (創元SF文庫)

未来医師 (創元SF文庫)

 

 

2010年現在から25世紀にタイムスリップした医師パーソンズ。そこは人種の混交が進み、混合言語を話し、複数の部族に別れて暮らす平均年齢15歳の悪夢的な未来世界だった…というお話。後半は未来や過去を行き来して、歴史の改変を試みる攻防戦を繰り広げる波瀾万丈のタイム・オペラに。

医者がタイムトラベルというと、幕末の江戸時代に行くコミック『JIN-仁-』を連想しましたが、過去ではなくて未来に行くのです。当然ディック調の暗黒未来になっていて、部族の血統を守るため、劣等な遺伝子を残さないために医療がなくなっているという、人口調整を国に管理された設定。そんな因果を絶つために16世紀まで戻って、こじれて絡まりまくった話に「また収拾付かなくなってぶん投げて終わるオチか」と思いきや、ちゃんと完結するので驚きました。すごい!するすると絡まりが解けていく過程が快感。

P・K・ディックのSFはドキドキする緊張感とチープさがたまらない。初期のはさくさく読めるので10代後半に出会っていれば良かったな。あの頃はハインラインアシモフだけは随分と読んだのだけど。学校帰りに通っていた市立図書館には「電気羊」しかなかったんだよな (´・ω・`)