夜空と陸とのすきま

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ウォー・ヴェテラン ディック中短編集/フィリップ・K・ディック

ウォー・ヴェテラン―ディック中短篇集 (現代教養文庫)

ディックの初期短編6作品を仁賀克雄氏が訳しまとめたもの。社会思想社・現代教養文庫も今はもうなくなったのでレアな古本、でもよく古書店で見かけます。

『髑髏』“ミイラ取りがミイラになる”まんまの話だけど、ミステリアスで良く出来たSF短編だと思う。

快適な生活必需品の素材となる希少物質を得るために、他の星に攻め込んでいく人類。夫が招集され戦死、息子も戦死、そして女性も招集されて…。誰も居なくなった地球という皮肉の効いた『生活必需品』と、人類は他惑星に植民していくが、やがて戦線が怪しくなり制圧した原住民から反乱を受ける『トニーと虫かぶと』の2つが印象に残りました。ディックはいつも戦争の恐怖と巻き込まれる人の視点からSFを書いていて、誰一人英雄なんて出てこない。