夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

ゴジラVSキング/Godzilla vs. Kong

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 7月の公開開始1週目辺りで映画館に観に行ってきました。あとでブログに書こうと思いつつ忘れる→ストーリーも忘れる始末。ハリウッド版はずっと夫と一緒に映画館に足を運んでいたのですが、とうとう夫からも「俺、今回いいわ」と拒否される事態に。確かにストーリーは速攻で忘れるほど中身無しだったけど、日中のバトル(いつもCG臭さをごまかすため夜間設定なのに)、巨大生物同士の洋上で船上バトル、スクリーンでの音響と迫力は見応えがありました。あとね、コングの顔芸!

前作でゴジラにキング・オブ・モンスターズの称号が与えられたので、キングコングがコングになっているとか、なるほどー。最終戦は香港が舞台でしたが、これまた絶妙なタイミングで現実の香港は大変な事態に。

フランチャイズであるモンスターバースシリーズに共通して出てくる特務研究機関「MONARCH」のウルトラ警備隊っぷりが楽しみだったりするんですが、今回のキャラクター描写は雑、さらに敵方として登場した芹沢博士の息子役、小栗旬の扱いがひどすぎてびっくりしました。小栗旬には英語スキルを上げてぜひともハリウッドにリベンジして欲しい。頑張れ!

海の鎖/ガードナー・R・ドゾワ他

行きつけの本屋で国書刊行会未来の文学>シリーズ完結フェアと称して、重版された本がずらずらっと並べられていて大興奮。この機会に『ゴーレム100乗』を購入するべきか真剣に悩む。まだ全巻読破できていないので、今後のお楽しみ。シリーズ最終巻は翻訳家の伊藤典夫セレクト8篇で、ネットのレビューを見て回ると、SFファンの先輩達のウンチクがたくさんあって、本書同様に楽しめました。

 

■神々の贈り物/レイモンド・F・ジョーンズ

宇宙人から超文明の宇宙船と案内ロボットをプレゼントされ、世界各国が取り合う話と、物理学者と軍人の私的な関係。地球の命運がかかっているのに、ララァの禍根でもめるシャアとアムロみたい…。

 

リトルボーイ再び/ブライアン・W・オールディス

終戦から百年の記念に、もう一度ヒロシマへ原爆を!という問題作。代表作の『地球の長い午後』でも、作中の女性に対する扱いにムカムカして読んだけど、これもまた酷いなと思ったらさらに原爆ネタとは。オールディス嫌いになりそう。当時の日本のSF作家陣が激おこで、オールディスが泣いて謝ったとかエピソードもすごいなあ。黒歴史な作品をあえてアンソロジーに入れるんですね、ひゃあ。

 

キング・コング堕ちてのち/フィリップ・ホセ・ファーマー

孫娘と祖父がキング・コングの映画を一緒に見ていて、「あの出来事は実は…」と思い出を語り出しという話。上手い!と呻る。祖父のほろ苦く怖い初恋もまた上手に絡んでいて。

 

フェルミと冬/フレデリック・ポール

突然始まった核戦争から、生き延びた人と核の冬を描く物語。冒頭の空港に避難者が殺到するシーンを読んでいたら、ニュースで流れたアフガニスタンの空港が!現実とリンクしすぎて辛い。なんというタイミング。

 

■海の鎖/ガードナー・R・ドゾワ

最後の表題作を読んで、大きなSF的な話のなかで主人公の私的な状況が同時に進行する物語が、訳者の好みなのかなと思いました。『海の鎖』は児童虐待の描写が辛いけれど、"新しいビジョン"には驚いた。

さあ、気ちがいになりなさい/フレドリック・ブラウン

 早川書房が2005年から2007年までに出した異色作家短編集は装丁も素敵だし、サイズも手に取りやすくて色が可愛いくて、カバーを外しても可愛い。でも今から20巻を揃えるのは難しそう(意外と古書店では昭和版の方を見かける)。タイトルを最初に知ったのは施川ユウキの『バーナード嬢曰く。4』で、確かに美容院で読める本のタイトルではない。翻訳は星新一で、星新一のニヒルな感じが増しているような短篇。猛暑で頭がぼっーとしてる時に読み終えて特に感激もなかったけど、巻末解説の坂田靖子氏のハイテンションな文章につられてもう一度読み返して面白さがわかりました。

 

みどりの星

緑豊かな地球に帰りたい男の話。狂気!え、どこから狂ってたの?最初から!

 

■おそるべき坊や
サーカスの魔術師ガーバー大王の世界征服をハービー坊やがくいとめる話。阻止の仕方がやんちゃでかわゆい。

 

■電獣ヴァヴァリ
宇宙からの侵略者によって地球上の電気を食われてしまうんだけど、電気がない方がのどかで幸せそうな人類。脱成長コミュニズム

 

■ユーディの原理

いつの間にか小人さんが仕事をしてくれる話。いやしかし、オチがそうくるか。ずるいな…。

 

シリウス・ゼロ

テキ屋の一家が乗る船が未確認の新しい小惑星にたどり着く話。最初の2ページで登場人物に親しみがわくのがすごいと思う。とても人間くさい終わり方も好き。

 

■町を求む

893の話。ものすごく短いのに、腐敗や賄賂の的を射ていてしびれる。

 

■沈黙と叫び

田舎の小さな駅で、駅長と私の会話文。聞き手がいなければ音は存在するのかしないのか?という禅問答のような始まりから、ヒュッと空寒くなる農夫の存在感。

100文字SF/北野勇作

Twitterで発表していた連作100文字縛りSFを文庫本化。 一気に読むものでもないし、ちびちびと寝る前のお供読書。100文字だと登場人物も限られてくるので、壮大なSFになりそうなアイデアだったり、小さな宇宙の話だったり、時間SFだったり、最後にスルッとSFになる。この作家さんは散歩の途中で考えているんじゃなかろうかと思える話と亀の話が多い。

夕方、宇宙ステーションが通過するので公園へ。何度もここで見ているから、どこを徹のかはわかっている。廃工場の三角屋根の端から現れてジャングルジムの真上を通りブランコの彼方へ。宇宙飛行士も知らない軌道。

アンドロイドの夢が見た電気羊、その電気羊から作った電気毛布です。もちろん、この電気毛布から逆算して電気羊を作ることもできますし、さらにその電気羊を組み込んだ夢をアンドロイドに見せることだって可能です。

 特に好きだった2作をメモ代わりに引用。私もよく宇宙ステーションをおっかけて見ているので状況がよくわかる。うちは山から現れて、田んぼの上空を飛んで町の方へ消えます。田舎だから空が広い…。電気羊の回みたいに、100文字で円環するパターンも多々。

アンドロメダ病原体/マイクル・クライトン

続編の『アンドロメダ病原体ー変異』が本屋さんで面出し展開だったので、いまさらですが旧作の方を読んでみました。衛星落下事故と一緒についてきた「地球外病原体」との戦い。1969年初版というと50年も前の作品ですが本当に色あせないし、説得力のあるドキュメンタリードラマ風に緊張感があって面白い。映画の方も見たくなりました。

ビル・ゲイツが何年も前からパンデミックに警鐘を鳴らし、いざコロナ禍になったら惜しみなく私財をワクチン開発に巨額投資していて、未知の危機に対する始動が早くてすごいなと思いましたが、『アンドロメダ病原体』はその未知なる病原体対処にあらかじめ国家プロジェクトが用意されていて、すぐにプロフェッショナルを招集し最悪核兵器投与まで計画されているという設定。研究施設の中で病原体の正体を解析するも、病原体の変異が早く、ギリギリの攻防が続くという手に汗をにぎる展開。いやはや面白かったです。備えあれば憂い無し、もしもの時とは常にSFが考えるきっかけを作ってくれるのかも。それに予算をつぎ込んで事前に計画を建てるのは現実では難しいんだろうな…と溜息をつきながら昨日の首相会見を見ました。もうちょっと長期的視点で政治して。