夜空と陸とのすきま

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虎よ、虎よ! /アルフレッド・ベスター

 

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)
 

 

本屋で購入。

SF版巌窟王
宇宙で難破して半年間の漂流中に、通りかかったのに救助してくれなかった宇宙船「ヴォーガ」に復讐を誓うガリー・フォイルの話。

ガリーの乗っていた難破船にお宝があり、そのため世界中から命を狙われるガリー。俺の復讐を邪魔すんなと次々に返り討ち…そんな展開になります。

SF要素をこれでもかっと詰め込む設定、テンポよく次々と進む展開。

 

全人類がテレポーテーション(通称ジョウント)できるようになった25世紀は

空港や駅のかわりに着地点のジョウント台が世界中にできる
ジョウントすることで時差分のみ時間が増える
人の家に勝手にジョウントしてくる=窃盗が増える
ジョウントされないよう敷地内に迷路を作る
治安が乱れ、疑心暗鬼になり、経済格差から宇宙戦争が起こる…などなどと

せっかく超人類になったのに、さらに堕落する人類。
ラストにガリーは世界中に火だねをばらまき、目を覚ませと聴衆に向かって演説します。

「諸君はブタだ。ブタみたいに阿保だ。諸君は自分のなかに貴重なものを持っている。それなのにほんのわずかしか使わないのだ。諸君は天才を持っているのに阿保なことしか考えない。戦争をやって消耗しつくすがいい。潸潸たる目にあって考えるがいい。自分を偉大だと思い込むために挑戦するがいい。おれは諸君に挑戦する。生か死か、そして偉大になるがいい。きさまたちが最後の破局をむかえるときには、このおれを、ガリー・フォイルを見出すのだ。」

 

早い展開の中で、主役のガリーも、ヒロイン達も何考えているのかさっぱりわからなかったのが少し残念。それでも1956年にこんな破天荒なお話が登場していて、あの作品の元ネタかな?と思える部分も多くて、やっぱり影響の大きいすごい小説です。