夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

フォワード 未来を視る6つのSF/ブレイク・クラウチ編

「近未来をSF小説で想像してみる」というコンセプトでは、同時期に文藝春秋から出た『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』がかなり気になっているけれど、三体0も購入したことだし、中堅どころの作家さん達のアンソロジー文庫の方をセレクト。

 

■夏の霜/ブレイク・クラウチ

オンラインゲームのNPCだった「マックス」をゲームから隔離して、AIとして深層学習で育てあげたら…という、スリラーSF。創造主(プログラマー)は壮大なしっぺ返しをくらうのもお約束。プログラマーのライリーと、AIマックスのレズビアンを匂わせる関係も面白かった。たとえ2億冊以上の本を読み込み深層学習を進めても、愛と人間関係は得られないんだな。

 

■エマージェンシー・スキン/N・K・ジェミシン

環境破壊が進み壊滅的なダメージを受けた地球を捨てて、別の太陽系へ移住した人間の末裔が、故郷である地球探査にある男を送り込む話。男の脳には人類保管計画的で合体したような集合知性が埋め込まれていて、命令する知性(われわれ)が男(おまえ)に話しかける記述で物語は進む。浦島太郎みたいな設定が面白かったです。

N・K・ジェミシンの『第五の季節』から始まる”破壊された地球三部作”も翻訳が完結したので、読むのが楽しみ。

 

■方舟(アーク)/ベロニカ・ロス

小惑星が地球衝突を免れないため、世代宇宙船に乗って移住していく人類。衝突間近まで地球に残り、遺伝子を保管するプロジェクトを進める科学者たちの話。終わりゆく地球の静かな最後を描いた良作でした。

ここまでの3作全てが地球と人類御破算物語ですよ。ちょっとブルーになる。

 

■目的地に到着しました/エイモア・トールズ

遺伝子操作と統計データに基づいた子どもの人生予測を提供している不妊治療研究所<ヴィテック>で、これから生まれてくる子どもの3パターンの運命を見る父親の話。

生まれる前から子どもをカスタマイズしちゃう未来。未来を想像しすぎると怖くて何もできなくなる。

 

■最後の会話/ポール・トレンブレイ

暗い部屋で目覚めた主人公とドクターの会話で構成される物語。『ドグラマグラ』みたい。こういう話の感想って何を書いてもネタバレになり書きにくいのでパス。巻末解説の言葉を慎重に選んだ文章が素晴らしいと思いました。

 

■乱数ジェネレーター/アンディ・ウィアー

貴重:宇宙に行かないウィアーの短編!ラスベガスのカジノ攻防話。一番期待していてなんだそりゃな感じでしたが。ウィアー短編集そろそろ出てくれないかな。