夜空と陸とのすきま

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いたずらの問題/フィリップ・K・ディック

いたずらの問題 (ハヤカワ文庫SF)

ディック20代の初期長編、早川書房がリニューアルして出してくれました。ありがとう!しかしたっけーよ(涙)なんでこれだけ?版権の問題?

パイロボットだらけの監視社会、モラルに反すると、顔の見えない匿名での公開リンチを受けるブロック集会、道徳再生運動〈モレク〉で何かと教訓に従わせる息苦しいディストピアが、まあ現代日本そっくりでびっくり。1956年の作品なのに。

そんな社会にいたずらを仕掛けて、一泡吹かせる主人公、最後もかっこよく締めて、後期のディックにはない前向きさ。

航空機に乗っていて乱気流に巻きこまれ、揺ら揺らと大丈夫かな?落ちるのかな?と不安になり、最後はなんとか無事着陸というのがディック作品。たまに不時着あり。不安こそディックの醍醐味。

過去の遺物のゴミだめの中で、「ユリシーズ」の本を見つけ出し、「最初から最後まで自分で書いたのが文学だ、だからすごいんだ」というエピソードが好きでした。