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純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語: ガルシア=マルケス中短篇傑作選/ガブリエル・ガルシア=マルケス

純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語: ガルシア=マルケス中短篇傑作選

ノーベル文学賞受賞作家、南米コロンビアのガルシア=マルケス中短編傑作集。

代表作『百年の孤独』を読んだのは…15年ぐらい前でレメディオス・バロの表紙絵に惹かれたから。マジックリアリズムとはさもありなんと、読後の疲労感が半端ない思い出が(登場人物家系図がややこしい)。今回この『純真なエレンディラ〜』を手にした経緯は、書評家のトヨザキ社長の帯の推し文「「永遠の古典」が約束されたガルシア=マルケス」を見て、そうか百年後には古典になるんだなぁと思いまして。

さて、10作収録中で表題作『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語』、異世界ラノベっすか?というほど長いタイトルですが、タイトルどおり14歳で性奴隷にされる少女の痛ましい物語。胸くそ悪い。ネタバレになりますが、最終的に白馬の王子様役の男を捨て置いて、金塊を抱え脱兎のごとく逃げていくエレンディラが逆に清々しいというか、女性性から解放されて良かったねと少し羨ましく思えました。

面白かった短編は『この世で一番美しい水死者』。寓話的なお話で、小さな漁村近くに大男の水死体があがり、村の女達総出で死体に絡みついた藻や貝を払ったら美男だったので、「なんていい男!エステバンって顔してる!エステバンだエステバンだ」と盛り上がり、盛大なお葬式をしてあげるという、水死体なのにハッピーな物語。何故にエステバン、太陽の子なの?

『巨大な翼をもつひどく年老いた男』堕天使というか、空から落ちてきた天使のじいちゃんを飼うお話。現実ではありえない出来事も、みんな普通に接するので現実だと思えてしまうのがマジックリアリズム。とにかくセリフが洒落ていて痺れる。