夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

内なる宇宙/ジェイムズ・P・ホーガン

 

内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)

内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)

 
内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)

内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)

 

 新年明けましておめでとうございますってもう松の内明けちゃったかしら?でも今日買い物に行ったモールには入り口に門松がまだあったなあ。ブログ8年目になりますが今年もよろしくお願いします。

さてさて、昨年12月から続く大雪で毎日雪掻きをするため、目が乾燥して文字がチカチカし読みづらさに辟易しながら(ひょっとして老眼?)コタツで読んできた「巨人の星」シリーズ第4弾『内なる宇宙』上下巻です。

前3部作で見事に円環を閉じたのに、熱烈なファンに続きを催促されて、ガニメアンの新たな物語が紡ぎだされました。今度はファンタジー、今風に言えば異世界が入ってきます。

前巻は10年ぶりの続編ということで、お馴染みのハント博士やダンチェッカー博士を書くことが楽しくてしょうがないらしく、作者のテンション高い高い。ノリにのって筆が止まらない感じ。ガニメアン達にちょっと来てよと頼まれて、いつものメンバーはまた宇宙へ旅立つ。あっという間にジェウレンに到着したけど、ジェウレン人の間にはなんだか怪しげな新興宗教が流行っていて…というお話。

今回もスパコンのゾラックとヴィザーが大活躍で、このスパコンとの掛け合いがシリーズで一番魅力に思えます。ハードSFが描く異世界はコンピュータの中にある。人の脳内にネットワークが繋がる過程をぼんやりでなく、コンピュータ用語でちゃんと説明してあるところがすごい。

 

 

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黒魚都市/サム・J・ミラー

黒魚【クロウオ】都市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

地球温暖化で海面上昇、長引く内戦で国家崩壊した近未来、北極圏の洋上都市クアナークが舞台。高度なAIに統治され、株主と不動産業の富裕層と押し寄せる難民との格差。混沌としたこのハイテク未来都市にシャチとホッキョクグマを率いたオルカマンサーがやってきたというお話。

不治の伝染病<ブレイクス>にかかった大富豪の孫フィル、政治家のもとで働くアンキット、ファイターのカエフ、そして街を憎むメッセンジャーのソク。四人の視点で交互に物語は進み、やがてオルカマンサーと結びつく。

前半は個々の人物が何をしているのかさっぱりわからないけど、200ページを越えたあたりから話がまとまりだし一気に終結へ。近未来都市と野性味あふれるオルカマンサーのぶつかりは面白かったです。行き詰まった監視・格差社会に風穴を開けるのは、いつだって野生児(未来少年コナン)だね!

ニューヨークを下敷きにしたSFとして読むと興味深い。

わたしたちは流浪の民だ。故郷は自分で作るところ。わたしたちがいっしょにいるところだ。それが放浪の民という生き方のいちばんの長所ー

 

巨人たちの星/ジェイムズ・P・ホーガン

巨人たちの星 (創元SF文庫)

前二作からのチャーリーの謎、月の謎、ガニメアン達の謎を解き明かしながら、ガニメアンと共闘してジェヴレン人との戦いを描くジャイアンツ・スター第3部。

スパイ、ミステリー要素、そしてスパコン同士のバトルあり、特殊部隊突入あり、まさかのタイムスリップ?とてんこ盛りな内容でアクティブな第3部。ホーガンのこのシリーズはスケールが大きくて楽しい。前二作の(私は気にもしていなかった謎を律儀に)伏線を拾っていって見事に円環を閉じてくれました。

地球人がここ数世紀で急に発展したのも、搾取階級が富を再配分せず独占するのも、すべてジェヴレン人の計画的な陰謀だった!なるほど!社会批判をSFに落とし込んでくるところも面白い。

歴史を通じてこの対立のパターンは変わっていないよ
教養があって、豊かで、精神的に解放された市民階級の出現を搾取階級は何よりも嫌うんだ。権力というのは富の帰省と管理の上に成り立つものだからね。科学技術は無尽蔵の富をもたらす。故に科学技術は規制しなくてはならない。知識と理性は敵である。迷信とまやかしを武器とせよ

さらに第4部という続刊があるそうで、「内なる宇宙 上下」をポチりました。

ガニメデの優しい巨人/ジェイムズ・P・ホーガン

ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

『星を継ぐもの』の続編、木星の衛星ガニメデのガニメアン達との心温まる交流を描き、人類誕生とガニメアンとの関わりも明らかにというお話。

ハント博士達は、20年間(地球時間で二千五百万年)の長旅をしてきたガニメアンを労り、ガニメデ基地に安息の場を提供し、かつ地球にもご招待。スイスのジュネーブ湖畔に選手村ならぬガニメアン村を急遽作り、地球人はお祭り騒ぎの大歓迎。

こんなに皆が優しく触れ合うファーストコンタクトSFもあるんだなあと驚きました。訳者あとがきにある「ホーガンのやや古風な、しかし健康な楽天主義は愛すべき味わい」なるほど確かに。

毎晩「オレは今夜もガニメデに行ってくる!」と家族に告げて、早々に布団に潜り込みワクワクしながらページをめくりました。とても楽しい読書でした。しかしジャイアンツ・スターシリーズはまだまだ続く。

 

星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン

星を継ぐもの (創元SF文庫)

月面開発を進めていたら、約5万年以上前と推測される赤い宇宙服を着た死体が発見された…というところから始まる名作謎解きハードSF。今さらですが100刷おめでとうございます!私の積ん読本だったのは35版。

人類の英知、学者や科学者が総力をあげてこの死体の正体を探るため、仮説をたてて事実へと導くところをドキュメンタリー風に話が進む。はたして人類はどこからきたのかが『サピエンス全史』なら、SFだったら自由にこう考察するねという感じ。40年前の小説なので、今だとトンデモオカルトに分類されそうだけど、スケールが大きくてロマンがあるなぁという感想でした。

高度な文明を築くも滅んでいった生命体。チャーリーの残した手帳からルナリアンの文字を、食糧庫の魚からミネルヴァの星を探っていく過程がとても面白かった。

ナショナリズムが衰退し軍備放棄された地球の国々、各国の学者が協力していてみんなやさしい。続編タイトルも『ガニメデの優しい巨人』とやさしい。そんなところが心温まる。