夜空と陸とのすきま

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イプシロン・ザ・ロケット 新型固体燃料ロケット、誕生の瞬間/西澤 丞

イプシロン・ザ・ロケット ―新型固体燃料ロケット、誕生の瞬間

平成最後の日に家族と筑波の宇宙航空研究開発機構JAXA)へ行ってきました。展示館「スペースドリーム」、あの規模のものが解説付きで無料見学できるのがすごい太っ腹!日本の宇宙開発に興味を持ってもらおうと、あの手この手で展示の仕方も凝っていてとても楽しめました。新聞やニュースで映像を見るより、実物大の中に入れたことは素敵な経験でした。

JAXA見学の復習にこの写真集を手にとってみました。イプシロンロケットを町工場で小さな部品を作るところから、組み立て〜打ち上げまでの長い行程を撮影。「下町ロケット」と、いったい何作作ったんだかの「はやぶさ」の映画は、あの漂う邦画特有の青臭さになかなか手が出せないでいるのですが、あちらもそのうち。

この本を先に読んでいたら、もっと熱心に展示品見てたなぁとも思う。掲載されている各部門の方のインタビューもそうなんだけど、日本の宇宙開発って、軍事や国の威信を懸けての愛国心よりも、純粋に宇宙への興味と憧れが前面に出ているのがいいです。そしてコスト削減って言葉が多く出てくるのも泣ける。経費があればデザインももっと凝りたかった!とか、管制室のコスト削減のためモバイル管制でパソコン2台で済むようにしたとか、現場超大変。欠陥商品F-35を爆買いするならこっちに予算を回して!

ロケット開発は国家機密でもあるため、せっかく撮っても本に載せられないところも多かったようですが、それでもロケット愛溢れる本当にかっこいい、撮影者の興奮が感じられる素敵な写真集でした。

郝景芳短篇集/郝景芳

郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

気が付いたら、一月近くも更新が途絶えている…。さて大型すぎた10連休、皆様はいかがお過ごしでしたか?もう疲れたよね〜。雪国の長い春休みがやっと終わったらと思ったら、健康診断、家庭訪問、授業参観後の10連休。1学期の授業の遅れはどうなっちゃうんだろう…。うちの子達もぽわーっとした顔で登校していきました。ホントに生活リズム狂うわ。そして私は毎度の家事疲れです。

家族全員が家にいるとなると、本を読みまくっていた割にはブログが書けなかった。この「郝景芳短篇集」も図書館で借りたので、もう返却してしまい手もとにない。

ケン・リュウ編の早川版『折りたたみ北京』とは翻訳家を変えて収録されている『折りたたみ北京』もまた良い。著者近影でみると郝景芳氏が美女だったのでびっくり。こんなに若くて美人で素晴らしい学歴&経歴のエリートがっっSF作家!?って感じ。でも全7篇の短編すべてに、彼女が悩んできた”いばらの道”が反映されていて、とても納得です。

詩的な表現の優しい文章のわりには、設定舞台は大掛かりに動き、ばっきんばっきんと折りたたまれてゆく首都北京のアイデア(『折りたたみ北京』)も壮大だし、月にいる侵略者に対して、共振を起こして弦に見立てた宇宙エレベーターを震動させ、音楽によって爆破するアイデア(『弦の調べ』)も壮大。力業すぎる。

一番印象に残ったのは、『山奥の療養院』。ようやく研究者から大学講師になれたのに、嫁は高級なベビー用品を要求し、義父はマイホームを買えとプレッシャーをかけてくるストレスフルな男性の叫び。この一体自分は何をしたかったんだ!?とわからなくなる感覚、ほんとそう。

おれもわかならい。人はもともと自由なもので、何だってしたいことができる。でも子供が生まれた途端、たちまち変わってしまう。子育てのために金が必要だし家も必要だ、何をしたくても自由にはならない。どうしてわざわざ自分を苦しめなきゃならないだろう?

俺たちがやってきた勉強はなんだったんだ。宇宙の中では知識にどんな意味があるんだ?

 『折りたたみ北京』の映画化楽しみです。人が死ぬような犯罪話ではないけれど、退廃的なフィルム・ノワールっぽいといいな。

がまぐちのポーチいろいろ

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100均で目的無しについ買ってしまったがま口。いっきにポーチ・財布として作り上げました。作ったはいいけれど、何を入れるのか全く考えていない。お祭りのときのおこづかい財布とか、旅行の時に役立てればいいかな。

ハンドメイドとして売っているサイトを見ると、さすがにクオリティが違いますね。
みんなじょんだな。

左側のリボンやらレースやらゴテゴテのやつは「うねうねごろごろ」さんのサイトを拝見しながら。型紙いっぱいですばらしいブログです!お世話になりました。

 


ゴールデンウィークまでは非常勤のお仕事もお休みなので、ミシンふみふみしたり、気合いをいれて片付けをしたりしています。断捨離ってあまり好きじゃないんだけど、今回は思い切って10年は触っていないであろう手芸のものは捨てていきました。亡くなった祖母が譲ってくれた大量の毛糸達。毛糸が変色したものはさすがに…。おばあちゃん上手く活用できずにごめんなさいと謝りながら。

シンドローム/佐藤哲也

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

『バーナード嬢曰く』の3巻で紹介されていた本を見つけたと、娘が図書館から借りてきていて、SFならば私も読まねばならぬなと手にとりました。

福音館書店ティーンズ向けのSFシリーズを出していたとはっ。その名も「ボクラノSF」シリーズ。そしてこの『シンドローム』は、まさしく「ボクラノ」という名称にふさわしい内容でした。「ボンクラ」と読んでもいい。

エイリアンが侵略戦争をふっかけてきているにもかかわらず、気になるあの子と友人との三角関係にほんろうされ、こじらせ、迷妄する中2病な男子高校生の物語。

何がすごいって、本の装丁がすごい。山のふもとに墜ちた火球騒動以降、徐々に謎の陥没が始まり、地下にいる何かが街に近づいてくるのとあわせて、文章の行頭が少しずつ下がってきて、さらに主人公の恋愛迷妄もドグラマグラのごとくどつぼにはまっていく。すごいね、考えた人天才!行頭を下げていくアイデアは、作者なのか、装丁の祖父江 慎なのか。

主人公君がとにかくめんどくさい。(若さゆえに)なんでも自己中心的な考えに支配されてしまう。いるいるこういう男子、って自分もそうだったかな。

教師は”愚劣”で、恋敵は”迷妄”。じゃあうだうだ言ってる君は何?

まるで映画のような、エイリアン襲撃というありえない状況からの、恋に恋する現実逃避がリアルでした。

最初に気味が悪いと言ったのは、平岩ではなくて久保田だった。久保田が気味が悪いと言ったので、平岩も気味が悪いと言い始めたのだ。気味が悪いと言ったので、本当に気味が悪いと感じているのだと思ったが、実はそうではなくて、久保田が気味が悪いと言ったから、平岩も気味が悪いと言っていたのだ。気味が悪いから気味が悪いと言っていたのではまったくなくて、気味が悪いと言えば久保田の共通の話題を得ることになるから、ただ気味が悪いと言っていたのだ。

 このめんどくさい文章、クセになります!

 

 

 

はだかの太陽【新訳版】/アイザック・アシモフ

はだかの太陽〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

ニューヨーク市警の刑事ベイリは、ロボット刑事ダニールとともに、宇宙国家ソラリアで起きた殺人事件の捜査を命じられるというお話。

冴えない中年刑事とロボット刑事のコンビが活躍する『鋼鉄都市』の続編。何かタイトルを見たことあったなぁと思ったら、だいぶ前に古本で買ってて本棚に入ってました。おぉいつの間にっ。

1人につき1万のロボットがお世話をしてくれる至り尽くせりな宇宙国家ソラリアでは、人々は広大な土地にまばらに住み、対人関係は映像のみの総引きこもり。300歳という長命のため、結婚も出産もすべて計画的・医学的に管理されていて、結婚していてもお互いがふれ合うことはない。こんな惑星まるごと密室空間で、人を傷つけることができないロボット三原則を守るロボット達もいて、いったいなぜ殺人事件が起きてしまったのか。

この対人恐怖症のソラリア人が笑えないというか、もう未来の我々の姿に見えて怖し。事件解決とかどーでもよくて、ソラリア人の観察日記のような内容。相手が見ているのは所詮映像だからと、モニター越しにすっぽんぽんで登場したかと思えば、近距離にリアルに近づくと対人恐怖で失神する。いやはやなんとも。

地球の鋼鉄都市はドームに覆われているので、ドーム育ちのベイリにとっては、さんさんと輝く太陽が照りつけるソラリアの環境が未知の世界。というわけでラストのセリフが「はだかの太陽」なんですが、最後まで読み終わるとタイトルの意味に感動します。人類よ、引きこもってないで宇宙へふみだせ!

ベイリとダニールのバディ物は、このあと『夜明けのロボット』、『ロボットと帝国』と続くそうですが、その2冊にいつか出会えるかな。

ヨシヤパテ!