夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

シンドローム/佐藤哲也

シンドローム (ボクラノSFシリーズ)

『バーナード嬢曰く』の3巻で紹介されていた本を見つけたと、娘が図書館から借りてきていて、SFならば私も読まねばならぬなと手にとりました。

福音館書店ティーンズ向けのSFシリーズを出していたとはっ。その名も「ボクラノSF」シリーズ。そしてこの『シンドローム』は、まさしく「ボクラノ」という名称にふさわしい内容でした。「ボンクラ」と読んでもいい。

エイリアンが侵略戦争をふっかけてきているにもかかわらず、気になるあの子と友人との三角関係にほんろうされ、こじらせ、迷妄する中2病な男子高校生の物語。

何がすごいって、本の装丁がすごい。山のふもとに墜ちた火球騒動以降、徐々に謎の陥没が始まり、地下にいる何かが街に近づいてくるのとあわせて、文章の行頭が少しずつ下がってきて、さらに主人公の恋愛迷妄もドグラマグラのごとくどつぼにはまっていく。すごいね、考えた人天才!行頭を下げていくアイデアは、作者なのか、装丁の祖父江 慎なのか。

主人公君がとにかくめんどくさい。(若さゆえに)なんでも自己中心的な考えに支配されてしまう。いるいるこういう男子、って自分もそうだったかな。

教師は”愚劣”で、恋敵は”迷妄”。じゃあうだうだ言ってる君は何?

まるで映画のような、エイリアン襲撃というありえない状況からの、恋に恋する現実逃避がリアルでした。

最初に気味が悪いと言ったのは、平岩ではなくて久保田だった。久保田が気味が悪いと言ったので、平岩も気味が悪いと言い始めたのだ。気味が悪いと言ったので、本当に気味が悪いと感じているのだと思ったが、実はそうではなくて、久保田が気味が悪いと言ったから、平岩も気味が悪いと言っていたのだ。気味が悪いから気味が悪いと言っていたのではまったくなくて、気味が悪いと言えば久保田の共通の話題を得ることになるから、ただ気味が悪いと言っていたのだ。

 このめんどくさい文章、クセになります!