夜空と陸とのすきま

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タイタンの妖女/カート・ヴォネガット・ジュニア

昨年末にアカデミー賞を獲ったSF映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(長い!略してエブエブ)を見ました。監督さんはヴォネガットの影響を受けたとインタビューで答えていたので、キー・ホイ・クァン扮する主人公の夫ウェイモンドが「人には親切に」とよく言っていたからそれか〜とか思っていたけど、いやいや『タイタンの妖女』の点と点を結ぶマルチバースな世界観が元だったのね。

爆笑問題太田光氏が大絶賛していて、所属事務所の名前「タイタン」もこの本のタイトルを元につけたというエピソードが有名です。いやはや面白かった。もっと早くに読んでいたらよかったと思いました。ラストのオチ、そんなことのために人類は進化してきたんか〜い(ツッコミ)が最高です。

時間等曲率漏斗とやらに飛び込んで波動現象になってしまい、宇宙のあちこちに存在してまれに実体化するラムフォードと愛犬カザック。
そんな神様?ラムフォードが、主人公である大富豪コンスタントを火星〜水星〜地球〜土星の衛星タイタンへと受難の旅に立たせるお話。

ユーモアな語り口調も楽しめたし、物語に入り込めたと思ったら、すぐ場面展開してテンポが良いです。何よりも登場人物が、慈悲のある最後を迎えるので良かったね(泣)と思えます。絶対死にたくない死に方ばかりするスティーヴン・キングの小説とは真逆。いい年した中年の自分には優しい物語が沁みるのです。ヴォネガットいいな〜。