夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

三体0球状閃電 /劉 慈欣

自分へのクリスマスプレゼントとして買って、お正月に炬燵で読みました。三体三部作より前に書かれて出版されたので、日本では刊行が逆。表紙絵に描かれている女性は智子ではないし、三体も出てこない。三体第一部の物理学者、丁儀が登場することで時系列的には前日譚なんですね。

初っ端、主人公の14歳誕生日に父が話す演説からもう面白いし、バースデーケーキを前にしていきなり球電が部屋に入ってきて、ちゅどーんな展開に目が離せなくなります。ゴリゴリくるなあ。

その "謎の自然現象" 球電の正体を解き明かして新兵器に転用したい林雲少佐が、これまた兵器LOVEクレイジーな女性で。劉氏の小説は本当にクレイジーな女性キャラばかりだな!大好きだ!

球電の正体も現実にありえなくもない…のか?と、妙に説得力があり、今まで読んできたSF小説の中で、いちばん『シュレディンガーの猫』についてわかりやすかった。大胆に動かすものが大きい(国とか物理とか)SFはいいね。

作中で主人公がWindowsXPのデスクトップ画面で感傷的になるシーンが好きでした。(原本は2004年刊行)

画面に広がる青空はほんとうに透きとおった青だし、草原の緑はまぶしいほど瑞々しい。眺めていると、デスクトップの風景は神秘的な異世界の光景で、この液晶画面はその世界に通じる窓なのではないかとさえ思えてくる。

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その後、怪現象に遭遇した主人公がこの画面を見て「空の青と草原の緑が上下に重なる怪しげな眼のように僕をにらんでいる」と恐怖を感じるのだけれど、確かに眼に見えてくるから不思議〜。