夜空と陸とのすきま

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いい感じの石ころを拾いに/宮田珠己

旅行記の多い宮田珠己さんの石拾いエッセイ。ただずっと海辺にしゃがみこんで、無心になんかいい感じの石を探すだけかと思いきや、石マニアのお宅訪問に東京ミネラルショーレポなど、石好きの沼の深さに驚く。

日本は地質が複雑で火山の国なのでいろんな石が拾えるとのこと。私は夏に海水浴に行くと、泳ぐのもほどほどにしてひたすらシーグラスを拾っていますが、この本を読むと石の魅力に気付かされ、すぐに拾いに行きたくなりました。特に黒い重い石が羨ましい。「北日本日本海側の海岸は質が高い」とのことなので、すぐにでも日本海に行きたくなってソワソワしてしまいますが、まあ春になってからかな…。北風寒い。

本書で出てくる担当編集者の武田氏が、あの武田砂鉄さんだったという衝撃。ただの石ころ拾いを、どのようにして出張報告書を作るか苦悩したという解説が面白かったです。河出書房新社の編集さんだったんですね、へぇー。

いいすねえ、石拾い。自分にとって価値のある石を探して拾って、そしてそれを取捨分別する行為って、自分の嗜好や癖と向かい合ざるを得なくて、座禅的なトリップ感があるというか……。(P289)