夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

ゴッド・ガン/バリントン・J・ベイリー

ゴッド・ガン (ハヤカワ文庫SF)

ブログを読んでくださる皆様、あけましておめでとうございます。
はてなブログ4年目です。この半年間は本職の仕事が忙しすぎて、どうしても裁縫箱とミシンをだすのが億劫になり、針仕事は後回しで積ん読消化に専念していました。積ん読なんて老後の楽しみにとっておけばいいやと思っていましたが、これから老眼で文庫本がつらくなると聞き、今必死で読んでいます。今年もこのつたないブログを宜しくお願いいたします。

 

さて、本当はお正月にこたつでゴロゴロしたかったけど、年明けの仕事の準備に追われて合間合間に息抜きに読んだのが、この英国SF界最高の奇才ベイリーの10篇からなる短編集。

ハヤカワさんは「カエアンの聖衣」に続いて、日本オリジナル編集の短編集も出してくれました。だんだん変な話になっていくのを狙った構成です。表紙絵がかっこいい!このフォント好き。Twitter早川書房東京創元社をフォローしていたら、まあ興味のある本をどんどんツイートされるので、発売日(地方なので+一週間後)に本屋に飛んでいくという、見事に術中にはまっている。

まずはロンドン編
●「ゴッド・ガン」
表題作で、ある夏の夜に友人ロドリックと酒場で飲んでいたら、酔ったロドリックがうち明けてくれたのは、「実は神を殺す光線銃を開発しているんだ…」という話。マッドサイエンティストキター!この短編集は変人が多く出てきてくれて、ニヤニヤしてしまいました。ベイリーかなり頭いかれています。
命を吹き込む神がいなくなったら、世の中はそうなるのか…それはいやだな。

●「大きな音」

宇宙に届く音楽をオーケストラで!イギリスの荒野ででっかくどーん!そのアイデアが楽しい。

続いて船編
●「地底潜艦」●「空間の海に帆をかける船」
これも地底に潜っていく船、空間に潜っていく船というアイデアが面白かったです。なんでそんなことができるの?と冷静に考えると謎なんだけど、おかまいなしの力業で進めてくるよ。

●「死の船」●「災厄の船」
死の船は話がよくわからなかった…。災厄の船は、ファンタジー。親友マイケル・ムアコックの影響で、傲慢で孤高のエルフの王様の物語。昔、エルリック・サーガもよく読んだなあということで、エルフ王は天野義孝画をイメージ。

そして問題作揃いの異生物編

 ●「ロモー博士の島」
エロくてエロくて話についていけませんでした、ロモー博士!(カマトトぶってみる)

●「ブレイン・レース」
異星人と関わっちゃいけません!関わると脳髄掻き出されますという話。キモかったけど、構成が非常に上手くできている。

●「蟹は試してみなきゃいけない」
蟹達の思春期から青春期までの恋愛、悩みの物語。
蟹ですよ、蟹!
蟹が蟹の雌の体(生殖器)を想像して、妄想で興奮して泡吹いて倒れたりするんです。ここでもう一度、Bayleyかなり頭いかれてる!

●「邪悪の種子」
無限の住人(異星人)。最後に壮大な力作でした。

 ワンアイデアで突き進む短編は、どれも勢いがあって楽しめました。ベイリー再評価で今後「禅銃」も再版か復刊をしてくれないかな〜

 

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーRogue One: A Star Wars Story

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劇場で2D吹き替え版を娘と一緒に見る。

「ローグ・ワン」を見た後は、すっげぇぇー!と絶賛するか、なんか違う…と困惑するか、ドニーさんフォ〜!に分かれるかだそうですが、私は「ドニーさん」派です。

ドニー・イェンが「フォースと共にあらんことを」って言ってる!マジか!

殺陣があいかわらず神がかっていてすごすぎる!

なんかしらんけど薄い本が作れるくらいBL要素ぶっこんできた!

 というわけでド兄ぃド兄ぃとテンションMAXで、隣に座っていた娘からかなり白い目で見られました。スマンおたくな母ちゃんで…。

 

エピソード4が黒澤明の「隠し砦の三悪人」だったら、ローグ・ワンは「南総里見八犬伝(角川版)」だったなぁという印象。

ガンダムで言うと、本編がシャアとアムロニュータイプバトル(超絶すぎてファンタジー)なら、こちらは「ポケットの中の戦争」みたいな、名も無き戦士達の泥臭い物語。後味が悪い感じも似ています。でもフォースなんてなくて、実力とただ運が良いだけでここまで生き延びてきた普通の戦士が本当はたくさんいて、そして反乱軍を支えてきたんだなと思えることができて、この「ローグ・ワン」のお陰でスター・ウォーズがより骨太なスペースオペラになった気がします。

ホント、アナキンの物語のジャー・ジャー・ビンクス って何だったんだろう…。すっころんで、転がった爆弾が敵に当たってラッキーとか、もう辛くて見てらんない。

スター・ウォーズを映画館で観ると、オープニングのファンファーレとタイトルのところで、条件反射的にブワッと涙ぐんでしまうのですが、今回はラストカットであの方が登場して、涙腺崩壊しました。銀幕の中で永遠に不滅なんだね!

観に行く前に、このガンダムの曲「哀戦士」がぴったりと合うというのを、Twitterで観てしまったため、劇場でもずっと脳内再生してしまいました。確かに合う。


『ローグ・ワン ~哀 戦士編~』

新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス/池上彰 佐藤優

新・リーダー論大格差時代のインテリジェンス (文春新書)
池上彰佐藤優対談集第3弾、今回はリーダー論がテーマです。アメリカの大統領選前の10月に出版されてますが、(先日読んだ町山さんの本もそうだけど)もうトランプ大統領を予言しているかのようで、トランプはなるべくしてなったんだなと読んだら思わざるを得ません。プーチンも来日したことだし、リーダーと独裁者について、まさに今読んどけって内容でした。新書は生ものなので、古本まちじゃだめですね。

・日本の財務にはコンソル公債(consolidated annuities)が有効

原発依存が非核につながる皮肉、日本は物理的に核武装が不可能

・教育が子供達を選別する役割になってしまっている

など、普段自分が目にしているメディアとは違う視点からの指摘が興味深かったです。最後の佐藤氏の「急ぎつつ、待つ」というあとがきに少し救われました。

 

最も危険なアメリカ映画/町山智浩

最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』 から 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 まで

 

「ハリウッド映画から見る、アメリカの病理」ということで、映画評論家町山さんによる、本当は怖いハリウッド映画本。

正直、知らない映画ばかりだったし、映画の紹介よりも、差別!差別!なアメリカの深い闇に (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルしながら読みました。銃を保持していて、反知性的であるがゆえに差別してくるって、ホントにぞっとする。第3章、第5章の「ディズニーが東京大空襲をけしかけた?」を読んでしまったので、今後ディズニーランドに行っても心穏やかになれず、スプラッシュマウンテンに乗ると暗い気分になること請け合い。

そしてやっと知っている映画が出てきた最終章でのロバート・ゼメキス監督の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と「フォレスト・ガンプ」が、そんな深読みがっ!と一番ショックでした。「バック・トゥ・・・」は3作部とも家族と一緒に映画館で見て、とても楽しかったのに。ついこの前もNHKBSで放送してくれて、また元旦もNHKBSプレミアムで放送するんだよね。はっ、こんなにリピート放送するのは、特定の政治的イデオロギーの陰謀かしら(おいおい)。「フォーレスト・ガンプ」を見た時の、何かモヤモヤした理由がわかりました。無垢な主人公よりも、時代に翻弄されながらも駆け抜けたヒロインの方が共感できたのに、最後の扱いがひどくて納得いかなかった。ゼメキス監督は確信犯だったのね。

トランプ次期大統領を予言したという映画「ボブ★ロバーツ」は、みてみたいです。

年月日/閻連科

 

 

年月日

年月日

  • 作者:閻連科
  • 発売日: 2016/11/10
  • メディア: 単行本
 

 「愉楽」の閻連科の中編。私は閻連科の作品を読むのは初めてで、どんな作風の方なのか知らなかったのですが、これはじわじわくる良作でした。

日照りが続き、村人たちが逃げ出した山間の村で、盲いた犬とトウモロコシの苗を守る先じいのお話。「」(かっこ)を使わないので、全体が「星の王子様」みたいな寓話的な雰囲気でした。

子どもの頃に読んだ漫画で、さいとうたかおの「サバイバル」というのがあって、壊滅した都市で1人生き延びた主人公がサバイバルしながら野犬とネズミと戦うという話で、その怖さがトラウマになってしまい、ハムスターを可愛いと思えなくなってしまったのを思い出しました。この「年月日」の先じいもサバイバルしながらネズミやオオカミと戦います。ネズミの集団怖いっ!逆にとって食べちゃう先じいもすさまじい。

トウモロコシの水分補給にションベンをかけたり、ネズミと戦ったり、先じいは饑餓で命つきる前に衛生面で病気にならないのが不思議。でも始終ギラギラした砂漠のような環境の中で、綱渡りのように細々と育つトウモロコシの繊細なところが印象に残ります。相棒の犬とのお互いの思いやりも泣けます。文字通りの一蓮托生。