夜空と陸とのすきま

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イラク水滸伝/高野秀行

高野さんの待ちに待った新刊です。この厚さ(P477)で2200円+税が安いと感じてしまうのは、海外文学の書籍に慣れてしまっているから。でもスラスラ読めて読後は映画一本分の満足感でした。イラクの湿地帯調査とマーシュアラブ布の追跡としては貴重な文献になっていると思う。湿地帯の群雄割拠を水滸伝に例えていて大変わかりやすかったけれど、英訳された場合通じるのだろうかといらん心配をしてしまう。

過激派が自爆テロを起こしまくっている治安の悪いイラクに何度も足を運び、交流を重ねることで少しずつ地元住民と打ち解けていき、最後はパンデミックを乗り越えての表紙写真。いい年したおじさん達がきゃっきゃうふふと自作した古代船(タラーデ)を漕ぎ写真撮影に挑むラストは大変微笑しい。イラクっていいところじゃんと思う。

あわせて高野さんがX(旧Twitter)のアカウントで8月から公表している船頭さんの歌とか、高野さんの愛の歌(イラクTikTokでバズる)とか、平和な水牛の集団とかを見るとさらに良し。