夜空と陸とのすきま

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火星の笛吹き/レイ・ブラッドベリ

レイ・ブラッドベリ初期短編集。商業誌デビュー作『ホラーボッケンのジレンマ』収録、ブラッドベリ17歳ですってよ。

私が子どもの頃に大好きだった漫画の一つに、ジャンプの月刊誌で連載されていたSFXの魔術師レイ・ハリーハウゼンの伝記漫画があって、「二人のレイ」としてハリーハウゼンの親友レイ・ブラッドベリが登場し、特撮と小説でSF界の頂点に立たとうみたいな話だった覚えがあります。ハリーハウゼンが手掛けた映画『シンドバッド7回目の航海』のガイコツチャンバラシーンとか『黄金の航海』のカーリーチャンバラは本当にすごくて動きがエモい。

この漫画に出てきた熱血青年ブラッドベリが当時書いた小説かと思うとなかなか胸熱な短編集でした。

あと、仁賀克雄氏の日本語訳も味わい深い。昭和感あるなぁと思ったけど1991年出版だから平成なんだな。「小田原評定」なんて出てきてびっくりした。今は使わなくなった言い回しを見つけると少しセンチメンタルになります。

そしてブラッドベリの繊細な詩情的描写は、私の脳内で萩尾望都のコマ割りになり四隅に花が散り、決めセリフをリフレインしてしまう。もっとも萩尾望都的だと思ったのが表題作の「火星の笛吹き」で、美少年が笛を吹き、「海中の監視者」ではセイレーンとなった美少女がヒラヒラドレスで海中を泳ぎ回るイメージが溢れ出てきました。萩尾望都大先生の絵で。