夜空と陸とのすきま

SF好き SF小説1000本ノックを目指しています

浴衣でトートバック

f:id:yanhao:20180412113846j:plain

里帰りして、三回忌を迎える祖母の形見をいくつかわけてもらいました。
その中で祖母お手製の浴衣をもらうも、私と祖母とは身長差が15センチ以上もあったので、袖丈、裾丈もちんちくりん。ちょうど買い物バックが欲しかったところなので、思い切ってバックに仕立て直しました。町の商店街で婦人会共通の浴衣を作り、盆踊りを優雅に踊っていたなぁと祖母の姿を思い出しながらミシン縫い縫い。専門店街のマークの「専」の字がかわいいです。
f:id:yanhao:20180412113841j:plain

浴衣の模様合わせが左右合っていないところも、お祖母ちゃん…雑…とか思いながら、着物をほどかずそのまま使っちゃった。私も雑っす。

f:id:yanhao:20180412113853j:plain

牛乳パックやビン類も入れるつもりだから、表地だけだと心配なので裏地も一緒に。袖は2つのポケットにして全部使い切ったー!いい供養になった気がします。

イスラム飲酒紀行/高野秀行

イスラム飲酒紀行 (講談社文庫)

春休みは子供と南国に帰省してきました。桜は満開、早くも初夏の陽気で蚊も出てきてる。
そして旅のお供は旅本がベストですな、というわけで高野さんのイスラム圏紀行文。
厳密に飲酒を禁止されているイスラム圏で、執念の酒を求めるという、お酒なんてあるわけないじゃん→じつは酒あるんかい!とびっくりです。どの国でも密造したり密輸してたり。イスラムは京都と同じ「建前と本音がある」、なるほどなるほど。かくいう仏教も僧侶の飲酒は禁止。般若湯という隠語もあるように、お酒はこっそりたしなむものですよね。

まだ平和な頃のシリアでシャハバワインを求める話を読んでいる最中に、東グータ地区の激しい空爆化学兵器使用のニュースが流れてくる。辛い。

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー/ケン・リュウ編

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

『紙の動物園』各SF大賞を総なめにした短編の名手ケン・リュウが精選し英訳した、中国若手SF作家達の短編アンソロジー。SFって大体が未来の話でもあるけれど、現代の写し鏡であり、その国の社会問題が見えてくるのが面白いなあと改めて感じました。印象深かったのは、老後介護がテーマの夏笳『童童の夏』と劉慈欣『神さまの介護係』。『童童の夏』に出てくるロボットの遠隔操作で介護しあったり、将棋を指したりする老人達や、病室で終末を迎える時に天井のスクリーンには公園で遊ぶ孫の視線を写し出すとか、いいなぁすぐにでも実用化されてほしい!祖父が亡くなった時に最期に見える光景が、あの無個性な天井なんてあんまりだと思っていたので。『神さまの介護係』はブラックジョークが効いていて良かった。

表題作でもある郝景芳の『折りたたみ北京』は、経済や労働者階級の問題を扱い、それでいてエンタメ度も高く素晴らしい短編でした。

華氏451』と『一九八四』の現代アレンジ版のような馬伯庸の『沈黙都市』、焚書の次は監視システムと言語統制。

そして陳楸帆『麗江の魚』のこのセリフにグサグサきました。もうおいらは虫の息…。

 

自分をすり抜けていく感覚がいやで、しばしば不安になるでしょう。世界が毎日変化していく。自分は毎日年老いていく。なのになにも達成できていない。砂をつかまえようとするのだけど、力をこめるほど砂は指のすきまからこぼれ落ちて、後にはなにも残らない…。

山怪 山人が語る不思議な話/田中康弘

山怪 山人が語る不思議な話

フリーランスのカメラマンである作者が登山者、マタギ、山沿いに住む人々を全国津々浦々渡って取材をし、まとめあげた山の不思議話。オチもなく、タヌキかキツネに馬鹿されたなどなど、民話になる前の原型のような話がたくさんあり、想像力をかき立てられます。

私自身は山に囲まれた盆地に住んでいますが、さほど山に行くことはないです。でも何回か道を間違えて山道に入り、前後も対向車も無しで淋しい山道を運転していくなんとも言えない怖さはわかる。でも「山怪」では普段登り慣れた山道でも不思議なことに出会う話が出てきて、知ってても知らなくても山は怖い。異界とか恐れる存在があるほうが、人も傲慢にならずにすむのか。

名前も無く姿形も何だかよく分からないという状態が、実は人間にとって最も厄介で怖い存在なのだ。取りあえず名前があれば、その分、恐怖心が減ったのである。

あとがきから引用しましたが、確かに名前があったほうが怖くない。水木しげるの妖怪大辞典は名前がある妖怪だから怖くない。

山形県村山市の奇祭「むじなのむかさり」は男女が入れ替わった花嫁行列は、大正時代に「キツネの嫁入り」を題材に始まったそうですが、たいまつを焚いて山の集落に登っていく行列は狐火に見えるので、「山怪」に出てくる体験談のように、山で狐火を見た人が始めたのかなと思いました。


むじなのむかさり 山形県村山市楯岡馬場地区 2015年11月8日

壇蜜日記/ 壇蜜

壇蜜日記 (文春文庫)

暖かいですねといえど、夜は寒いので油断できない。週末には雪、雨、晴れのマークが一日のスペースに押し込まれ、狭そうにしていた。結局「降るかもしれないし降らないかもしれない」と言いたいのがよくわかった。

2014年2月25日の日記、まるで今日の天気のようだ。

檀蜜の日常をつれづれと書いた日記。感性が鋭くて、とても繊細で、書けるようで書けない文章は魅力的でした。ネコのこと、メダカのこと、コンビニ、ゴミ出し…。たまにぼかした芸能人の話。多分、あの人のことかなと推測するのもまた楽し。でも公開日記に書かれるなんて、同業者もやりにくいだろうなぁと思ったり。

あと、すらすら文章が頭に入ってくるので、読んでいるととてもシンクロしてきます。檀蜜とのシンクロはエロチックでドキドキしましたが、芸能界にこのままいられるのかという不安や孤独なども共感してしまって、ちょっと一気には読めませんでした。

毎日数ページの檀蜜タイム。