すぐれた料理人(厨師)一族の村、斉家村の斉錬は、山できのこ取りの最中に謎の男から謎の鍋を借り受ける。その鍋は煮炊きをしないでいると、動物や人間を襲う妖怪鍋だった。鍋を持ち主に返してくるまでは勘当だと村を追い出され、斉錬は流浪の厨師となる。というお話。
たいした調味料を入れなくても、長年の味が染みついた鍋からでる出汁で、美味い料理ができるって、最初に猫食べてたよねこの鍋…。うーむ怖いわ。
戦場の飯炊き、名家の隠居、そして物の怪のすみかと旅は続き、さらに斉家村からお守りにと渡された包丁が、あやかしに会うと剣に変身したりして、猛烈に楽しい中華ファンタジー。
後半に出てくる鳥が好きな女の子、琳泳。清の時代だけに、女性の纏足の描写が痛々しいんですが、この娘は小気味よくってマイノリティで親近感がわきました。
ショートショートのオムニバスで続く連作。すべてが最後の物語に繋がっていく構成もお見事。ぜひコミカライズかアニメ化をして欲しい、透きとおる水墨画調で。なんなら本場中国でアニメ化して欲しいくらい。