夜空と陸とのすきま

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ロカノンの世界/アーシュラ・K・ル・グィン

ロカノンの世界 (ハヤカワ文庫SF)

ゲド戦記」でおなじみのル・グィンのSF。SFといっても惑星・宇宙船・兵器がちょろっと出てくる意外はほぼファンタジー。辺境の地フォーマルハウト第二惑星の大陸横断物語。読み終えてから、ル・グィンが作った「ハイニッシュ・ユニバース年代記」という時代は違うけど同一宇宙の設定のシリーズがあり、この「ロカノンの世界」はそのオリジナル年代記の第一作目と知る。まだこの後に「辺境の惑星」「幻影の都市」「闇の左手」と続くんだよーんとあとがきを読んで、クラクラ目眩がしました。先に大いなる世界観(年代記)を作っちゃって、物語を書いていくのか。永野護の「ファイブスター物語」みたい…。(あれは途中で挫折しました)

まあ知らずに運良く第一作目を読んだわけです。これは「星の君」と呼ばれる調査隊の美青年ロカノンと、誇り高き国の王モギーンが、空を飛ぶ風虎に乗って、未踏の大陸の果てまで反逆者を追いかける旅に出るお話です。一人称の表現が美麗で、旅自体は命がけで泥臭いところが神話っぽいし、萩尾望都の表紙イラストがすごくマッチしている。ああ、若くてもル・グィンだなぁと思いました。暗くて寒くて泥臭い中で宝石だけが光輝いているところとか。