夜空と陸とのすきま

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最後のウィネベーゴ/コニー・ウィリス

最後のウィネベーゴ (河出文庫)

SFの女王コニー・ウィリスの短編集。コニー・ウィリスといえば、上下巻の分厚い長編作家というイメージで、まだあまり手を出していなかったのですが、このベスト短編集面白い。ウィリス中毒になるってわかる、笑いがあるって大事。

 

○『女王様でも』
「そんなに女性問題(Women's Issues)を書いてほしいなら書いてやろうじゃないの。女性の問題そのもの(The Women's Issues)を書いてやる」と啖呵を切って書いたらしい、フェミニズムSF。そんなジャンルありか〜、まさか月経を主題にしたSFがあるとは思いもよらず。あの40年間続く月一の苦しみから解放される近未来、月経をコントロールできたら…色々と考えさせられました。

 

○『タイムアウト』 
旦那は多忙で帰って来ず、ワンオペで娘達の送り迎えにPTA役員でてんやわんやのマルチワーカー主婦のちょっといい恋いバナ。SFといえば、近未来、火星、宇宙ステーション、科学者と遠くの話と割り切っていつも楽しんでいますが、どうよこの生活臭。私のことかぁぁ!水疱瘡騒ぎとか、「明日、学校でアレがいるからモールに寄って買って」と突然言い出す娘とか、涙無しには読めません。

 

○『スパイス・ポグロム
日本のスペース・コロニー(ソニー)の超狭いアパートにエイリアンが居候するドタバタコメディ、かつ恋バナ。日本人読むべし。てんぷらピザ、刺身ラザーニャ、リングイニ鰻ソース、すとりっぷ、銀座に三越、満員電車まで宇宙にあるねん。

 

○『最後のウィネベーゴ』
この短編を読んだ後に、かわいいイッヌが寝転んでいる表紙を見て、絵の意味がわかると戦慄しました。写真が導く力はすごいなぁ。ゆっくりと終末に向かう世界も、じわじわきました。

 

○『からさわぎ』
言葉狩りがテーマのブラックジョーク。自分も昔の女性軽視を苦々しく思うことは多多あるけれど、当時はそうだったんだからしょうが無い。古典文学の言葉を狩ってもねぇ。