夜空と陸とのすきま

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サマー/タイム/トラベラー 上・下/新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

東京オリンピックのマラソン競技だけのために、大混乱を招き、現場SEが阿鼻叫喚するサマータイムを導入しようとか、いいかげんにせいやぁちころすぞごるぁなどと下品な言葉を発しながら鬱々とした気分になったところで、積ん読棚にあった「サマー/タイム/トラベラー」と目が合う。

本書は夏時間のサマータイムとは全く関係ない、ひと夏の冒険ジョブナイル。田舎町が舞台で、幼なじみの女の子がちょっと時間を「飛んじゃう」能力を得て、仲良しの少年少女がタイムトラベルを解明しようと議論や実験したり、ワイワイやっているうちに謎の事件に巻き込まれるお話。全体の構成や雰囲気は映画『君の名は』を彷彿させる。

タイムトラベルすると、なぜ背中のミズスマシと腸内細菌、衣服もついてこれるのか?なのに人間や猫ではダメなのか?などなど。そういわれればなんでだろうと目の付け所が面白かったです。それに対する返答はさっぱり意味分からなかったけど。

とにかく上下巻ともにほんまに高校生か?という主人公達の博識ぶりにクラクラしました。そんなにタイムトラベル物の名作SFや理論を振りかざすなら、巻末おまけに書名一覧を載せて欲しかった。

気合いの入った町の地図も縄文時代から未来の分まで所々に載せてくれていますが、本文とそんなにからまないので、活かしきれていないんじゃないか。

後半も詰め込みすぎてすっちゃかめっちゃかだったけど、ほろ苦いせつなさを感じる余韻はかろうじて残りました。

手の届く最良のものをつかまえて、そいつと共に歳をとれ。なぜって、愛するっていうのは、時期を待つものじゃないのだから。そして対価を支払ってこそ、大切に扱う動機も強くなる。

自転車屋さんの若旦那のこの台詞はいいね!