夜空と陸とのすきま

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十月の旅人/レイ・ブラットベリ

古本屋で購入、積ん読消化。

ノスタルジアと残酷、無邪気な童心と突如訪れる狂気ー宇宙時代の散文詩人レイ・ブラットベリの初期短編集。

かなり久々にブラットベリを読んでみましたが、初期作品ということもあるだろうけど、こんなに怖い話を書く人だったのかと意外性がありました。最後のオチまで記述はないけれど、その後起こるであろうことを想像すると背筋が凍りつくという話が多かったです。「十月のゲーム」はホラーだ。

全部が怖い話でもなくて、もうすばらしい物語が作れないから、トーマス・ウルフを過去から連れてきて、病気を治して続きを書かせろ!という破天荒な未来を描いた「永遠と地球」は、最初は笑ってしまいましたが、ラストは美しくて印象的でした。

10編中最後のストーリー「すると岩が叫んだ(1953年)」は、白人が人種差別、ジェノサイドにあう差別逆転の話。山刀や肉屋のキーワードに肌がぞわぞわします。映画「ホテル・ルワンダ」を思い出しました。以下、気になった部分を引用。

自分の知っている人間を殺すのはむずかしいが、知らなければ、なんてことはない。

 

故郷で起こった暴動を思い出すがいい、群衆を。どこだって同じようなじゃないか。先頭にたつのは少数の気ちがい、静かな連中はずっとうしろのほうにいて、何ごとにも関わりあわないようひっそりとして、騒ぎが終わるのを待っている。大多数は行動しない。ほんのわずか、ひと握りがお先棒をかついで暴れまわるのだ。