本棚の隣で針仕事

雪国在住。積ん読本と図書館通い、 録画した映画、買いためた布や手芸用品をどうするかの記録。

去年を待ちながら/フィリップ・K・ディック

去年を待ちながら (創元推理文庫)

ハヤカワ文庫から新訳版が出たばかりですが、読んだのは創元SF文庫の方です。

2055年、リリスター星と同盟を結んだ地球は、リーグ星(昆虫タイプのエイリアン)との星間戦争に巻き込まれ、泥沼の戦争中(スターシップ・トゥルーパーズ的な?)。この苦境から地球を救い出そうとする国連事務総長モリナーリの専属人工臓器移植医であるエリックが主人公。

このエリックもモリナーリもネガティヴで自殺願望が強く、始終死にたい言いながらも臓器移植を繰り返してやたら長寿。エリックの妻キャサリンは、夫との不仲から禁断のドラッグJJ180を服用し中毒になり、解毒薬がないとわかると、エリックを騙して服用させ、共に地獄へ落ちましょう、けけけっwwいう展開に。

さらにエリックがJJ180を服用すると、タイムスリップするのであります。きたきた歪んだディックワールド!私の仕事はただいま繁忙期でして、疲れ果てた脳にビシビシ響きました。

さらに私小説要素が強く、このキャサリンのモデルは、明らかにディックの3番目の妻(浪費家)アンらしく、エリック=ディックと読むと、その振り回されっぷりに涙がでてきます。最終的にキャサリンとその道を選択するのか、やりきれねー、もう絶望しかないんだけど、こうして人生は続くのね。

人生はさまざまな様相の現実から成っていて、それを変えることはできないからです。妻を捨てるということは、こうした現実に耐えられないって言っているのと同じなんです。自分だけもっと楽な特別の条件がなければ生きて行けないって言うのと等しいことなんです。

 

ベイビー・ドライバー/ Baby Driver

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史上初、ミュージカルとアクションの奇跡の融合映画!音楽を聴くと、天才的なドライビングができる”逃し屋”の話。

今回は娘と映画館へ。前日に予告編をYouTubeで見ていたら、娘も一緒に行きたいと言い出し、R15、PG12じゃないし、「ローグワン」も大丈夫だったから、予告編を見る限りこれくらいのアクション映画なら多分OKかなと思い連れて行ったのですが、いやもう始終ハラハラでした。

映画が面白くてハラハラと、小学生に大丈夫か?この描写とのハラハラで。

テキーラ‼︎」で爆発シーン

なぜか娘とガッツポーズ

串刺し!

私「ごめんね、大丈夫だった?今の」

娘「大丈夫、大丈夫、たぶん」

激しく轢き殺す!

私「あわわ、大丈夫?」

娘「大丈夫、大丈夫、へいき」

という感じで、日曜日午前の劇場は他に2〜3人が離れてまばらに座っているだけで、ほぼ貸切状態だったので、いちいち隣に座っている娘の反応を気にしてしまいました。

見終わった後の娘の感想は「英語わかんなかったし、字幕も漢字が読めなかったけど、話はなんとなくわかった!ハードだった…」でした。確かに、小3の君にはハードだったね。私の感想としては、最高に面白かったけど、音楽の元ネタや歌詞が聴き取れたら、もっと物語に絡んでいたのを読み取れたんだろうなと、むうぅ悔しい。彼女の名前のデボラ云々のとことか、オースティン・パワーズのギャグも、ラストの車内の会話も意味がわからなくてモヤモヤ。

カーアクションもかなり見応えあったけど、最初にカフェにコーヒーを買いに行く長回しのシーンが一番好きでした。音楽に入り込むベイビーの世界観が詰まった、素敵なロングカット!

 

お日さまお月さまお星さま/カート・ヴォネガット アイヴァン・チャマイエフ

お日さま お月さま お星さま

デザイナーのアイヴァン・チャマイエフが描く、太陽・月・星の絵を元に、カート・ヴォネガットがお話を作った絵本。太陽・月・星というたった3つ図形の構成図から、まさかのイエス・キリスト生誕の話に結びつけてきたヴォネガットの想像力に感嘆させられました。

新生児の視力は遠視で0.01ほどしかないので、周りの世界はぼんやりとしか見えていないそうですが、神の子とはいえ、生まれたばかりのイエス様が見ていた母マリアやヨセフ、羊飼い、東方の三博士のいる空間はこんな感じだったのかなと想像するとほこっり。かと思いきや「やぶにらみ」のシーンはちょっとドキッとする。甘すぎないところがいいですね。うちの子が小さい頃に一緒に眺めたかった絵本でした。

宇宙の操り人形/フィリップ・K・ディック

宇宙の操り人形 (ちくま文庫)

時系列順に読んでいるディック作品ですが、これは古書店で見つけることができず、結局ネットでポチりました。珍しくちくま文庫から出ている初期の中編SF。ちょっと初期作品に戻ってみる。

子どもの頃に住んでいた山間の田舎町ミルゲイトへ行ってみたら、そこは自分が覚えていた町ではなかった!というお話。町がバリアーによって一般道から隠されていたり、果ては善と悪の神様の戦い(ゾロアスター教みたい)へと繋がったりと、SFとファンタジーの間をいったりきたり。お話の導入部分は、自分の記憶は偽の記憶なのかという主人公のぐらぐらする揺れ間がたっぷりと味わえて、これぞディック節で面白い。けれど神々が戦う後半は、お話がよくわからないまま終わってしまい残念。

前半の部分、私の脳内では↓だいたいこんな感じでしたよ。

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ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン/ピーター・トライアス

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

初めて表紙を見た時に「おぅパシフィック・リム!」とヘンな声が出てしまった「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」をようやく読み終えました。

台詞が多く、まさにハリウッド映画超大作のような展開に、すらすら読めるかと思いきや、意外に拷問シーンが多くてえぐいぞ。あと、期待したロボット大戦もそんなになくて表紙詐欺。それでも訳者の方がノリノリで書かれているのがよくわかり、漢字の当て字や関西弁などが「こうであってほしいSF、なんちゃって日本風」を上手に演出してくれて楽しめました。

共謀罪が成立する前に、本書が話題になっていましたが、読んで納得。時代設定は、もしも日本帝国とナチスが太平洋戦争で勝利していたら〜からの枢軸側に占領された80年代のアメリカですが、ああいやだ、いやだ。せっかくここまで時間をかけて自由になってきたのに、あの息苦しく生きにくそうな世界に戻りたくないですね。