夜空と陸とのすきま

ゆるいSF脳。SF小説2000本ノックを目指しています

サマー/タイム/トラベラー 上・下/新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

東京オリンピックのマラソン競技だけのために、大混乱を招き、現場SEが阿鼻叫喚するサマータイムを導入しようとか、いいかげんにせいやぁちころすぞごるぁなどと下品な言葉を発しながら鬱々とした気分になったところで、積ん読棚にあった「サマー/タイム/トラベラー」と目が合う。

本書は夏時間のサマータイムとは全く関係ない、ひと夏の冒険ジョブナイル。田舎町が舞台で、幼なじみの女の子がちょっと時間を「飛んじゃう」能力を得て、仲良しの少年少女がタイムトラベルを解明しようと議論や実験したり、ワイワイやっているうちに謎の事件に巻き込まれるお話。全体の構成や雰囲気は映画『君の名は』を彷彿させる。

タイムトラベルすると、なぜ背中のミズスマシと腸内細菌、衣服もついてこれるのか?なのに人間や猫ではダメなのか?などなど。そういわれればなんでだろうと目の付け所が面白かったです。それに対する返答はさっぱり意味分からなかったけど。

とにかく上下巻ともにほんまに高校生か?という主人公達の博識ぶりにクラクラしました。そんなにタイムトラベル物の名作SFや理論を振りかざすなら、巻末おまけに書名一覧を載せて欲しかった。

気合いの入った町の地図も縄文時代から未来の分まで所々に載せてくれていますが、本文とそんなにからまないので、活かしきれていないんじゃないか。

後半も詰め込みすぎてすっちゃかめっちゃかだったけど、ほろ苦いせつなさを感じる余韻はかろうじて残りました。

手の届く最良のものをつかまえて、そいつと共に歳をとれ。なぜって、愛するっていうのは、時期を待つものじゃないのだから。そして対価を支払ってこそ、大切に扱う動機も強くなる。

自転車屋さんの若旦那のこの台詞はいいね! 

世界の混沌を歩く ダークツーリスト/丸山ゴンザレス

世界の混沌を歩く ダークツーリスト

TBS深夜番組「クレイジージャーニー」で超絶人気の、危険地帯ジャーナリスト丸山ゴンザレス旅行記&「クレイジージャーニー」裏日記。世界中にあるスラム街、地下住人に取材したり、ドラッグやブラックビジネスの真相にせまる。

ここ数年は「クレイジージャーニー」を毎回録画して娘と一緒に見てますが、いやホントに素晴らしい教育番組。世界の現実をありのままに、広い視野をもてるよね。

さて本書では放送時でぼかしていた写真も、ストレートに載ってました(遺体とかうんことか)。そしてゴンザレスさんの番組スタッフに対する冷ややかな態度がウケる。ジャーニーの皆さん達は、取材中は結構スタッフにキレてるような。それでも現場での危険察知と判断が早いので、今まで無事に番組が作れているんだなと感心しました。これからも大胆に慎重に撮影していって欲しいです。

放送時も見ていて恐怖を感じたけれど、メキシコの麻薬戦争・カルテルの取材はよくやれたよなと思いました。夜中にホテルの部屋のドアを何者かにノックされ続けるなんて、完全に目をつけられているし。読んでいてこちらも冷や汗がでました。

メキシコも中東もこれからどうなるのか。まずはこの世界にはどこも解決の糸口が見つからずに、こんがらがっている状態のことばかりだということを知ることから。今は何もできなくても、知ることは大事。

 

 

 

 

七人のイヴⅡ/ニール・スティーヴンスン

七人のイヴ ? (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

月が7つに分裂し、無数の月の破片の落下<ハード・レイン>がいよいよ始まる。宇宙ステーションを核とした<クラウド・アーク>に逃れた人類は1500人。襲いかかる困難の数々、そして内部分裂、はたして人類は生き延びれるのかー近未来宇宙開発ハードSF大作、第2弾。

いよいよ到来の<ハード・レイン>で地球上の人類は滅亡するのですが、Oh!70億人が一瞬で消滅ってすさまじい。逃れられない死を迎えるため、ノートルダム寺院フィルハーモニー管弦楽団の生演奏を聴きながら死んでいくなんて、タイタニックみたいでせつない。

軌道力学の知識がないので、想像しにくいところもあったけど、わからない箇所はすっとばす。

Facebookが宇宙ではSpacebookになって、やっぱりSNSでわいわい言ってるのが面白い。

資源を新たに追加する奇跡のミッションを乗り越えても、技術者でない政治家がかき乱して内部分裂、宇宙放射線によるガン発病、重なるアクシデント!さらに食糧不足とくれば最後にやっぱり出てきた○○、エグイ…。いやはやハードでした。第三巻ってどうなるんだろう。

登場人物で唯一の日本人がジロー・スズキ君で、フクシマで汚染除去を管理していた原子力技師という設定がいやはや、SF小説では日本=フクシマって鉄板になりそうですね。

濃密さは1巻目以上で、私のショートした脳が導いたひらめきは、「そうか、イチロー選手がイチロー・スズキだからジロー・スズキか」。どうでもいい。

帰ってきたヒトラー/Er ist wieder da

帰ってきたヒトラー [DVD]

あのヒトラー総統が1945年の自殺後、2014年のドイツにタイムスリップしてくるお話。テレビ局社員のゼンゼンブリンクは、未来に来てしまって混乱しているヒトラーと偶然出会い、本物そっくりさんだと思い込み、コメディアンとして一発当てようと企む。

ゼンゼンブリンクの部屋に、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のポスターが貼ってあってほほえましい。そういえば、ヒトラーがタイムスリップしてきた時に、火がくすぶる状態もあの映画へのオマージュに間違いない。

戦後70年たったドイツを旅するゼンゼンブリンクとヒトラー。行く先々でインタビューすると、町の人は現状の政治や格差、移民問題にいらだっていたりする。ここで「自虐史観にはうんざり」と言い出すドイツ人もいるんだなと、ちょっとショック。

この旅するヒトラーを見ているうちにだんだん好感をもってきてしまう、ホントにうまい撮り方。チャーミングなところもあるんだなとか、頭の回転がよい演説に聞き惚れてしまったり。

そしてラスト近く、認知症のおばあちゃんが急にはっきりとして「あんたのことは忘れない、私の家族をガス室に送ったんだ。最初はみんな笑っていた。でももう二度とだまされない。」と言い放つ台詞で、ヒトラーの怖さを思い出しても全てが手遅れっていうオチは、いやはや怖かった。自分もまさにチョロい民衆の一人でした。

知らなきゃよかった 予測不能時代の新・情報術

知らなきゃよかった 予測不能時代の新・情報術 (文春新書)

文春新書の池上彰佐藤優対談集、第4弾。あまりにも世界の動きが速すぎて、この対談集もホントに生もの。

私はTwitterを楽しく閲覧してますが、SNSはとても居心地がいいけれどエコーチャンバー現象が怖くて、フォローしている人の考えに陥りやすい、考えに隔たりが出る、情報の正確性を問わなくなるなど、閉鎖的な狭い世界にいるんじゃないかと時々不安になります。
ryukyushimpo.jp

なので、たまにはこの二人のネットに出回っていないであろう意見をガツンと読むことで、別の視野を確保してみたくなります。

今回の対談集では、なぜ急いでカジノ法案を通す必要があったのか、中東(エジプトとイラン)の分析が興味ありました。めまぐるしく変化する世界に対応するために、独裁国家ばかりになるのは理解できたけど、でもあほうがトップなのは辛く耐えがたい。チェンジ希望。