夜空と陸とのすきま

ゆるいSF脳。SF小説1000本ノックを目指しています

紙の民/サルバドール プラセンシア

紙の民

訳者がアンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を翻訳した藤井 光さんで、さらにSFっぽい表紙で、帯には柴田元幸氏が大絶賛してはるコメントが!これは名作だろうと手に取りました。実際には迷作でした。

「あなたの寝ションベンにはもう耐えられない!」と突然妻が出て行ってしまい、傷心のフェデリコ・デ・ラ・フェは、娘と二人で国境を越えてロサンゼルス郊外で労働者として新たな生活を始めたが、天空にいる土星から自分達を盗み見されている気がして、ギャングと共に土星に戦争を仕掛けるという奇想天外なお話。

中盤で土星=作者とわかり、メタでメタメタな構成に感心して、作者の大失恋話にゴールデンボンバーの『女々しくて』が脳内でリピート!

さらに三段の段組、縦横の文字方向の入り乱れと、DTPソフトAdobe InDesignの限界に挑戦したかのような自由なレイアウトで、とにかくはちゃめちゃ。よくキャラが勝手に動き出すといいますが、暴れて作者を余白に押しやったり、文字を隠したり、最後には自分達がページから出て行ったり。だから「紙の民」なんですね。

比喩表現が多くて、詩を読んでいる感じでした。ストーリーはあるようでないような。ライムを刺したコロナビールを飲みながら読もう!

ヒッキーヒッキーシェイク/津原泰水

ヒッキーヒッキーシェイク (ハヤカワ文庫JA)

引きこもりカウンセラーのJJは、四人の引きこもりを連携させて、あるプロジェクトを立ち上げる。「人間を創る、不気味の谷を越えたいんだ」。こうして始動したアゲハ・プロジェクトは思わぬ展開に…というお話。

まず「不気味の谷」って何やねんとググる。全体がテンポの良い会話文で進み、用語解説がほぼないので意味がわからないままだと迷宮に入りそうになる。急に場面が変わるので、何が起きたか考えながら読み進めるため、読者の想像力が試される。これが「行間を読む」というやつか!なんとも楽しい読書体験、最後までグイグイ引っ張られました。いやー面白かった!

JJが『もののけ姫』のジコ坊みたい。なんとも憎めないんだな。

禁足地帯の歩き方/吉田悠軌

禁足地帯の歩き方

怪談蒐集家、オカルト探偵の吉田悠軌による「開かれたあの世巡りの本」。禁足地、聖地、怪談現場すべてに掲載許可を取っているなど、緻密な取材は好感が持てました。特に離島の話は興味がありました。

怪談現場紹介では、昔通っていた大学近くの有名な怪談スポットが載っていて、近くにいた割にあの現場には最後まで行かなかったなあ、まあ行かなくて正解みたいでしたが。こういう取材する時、吉田氏本人もちゃんとお祓いとかしてるのかしらと気になったり。

第4章の聖地紹介で、神戸・氷室神社の恋愛弁天が出てきて、作者本人が書いた「恋愛祈願」の手紙全文が直球すぎて苦笑。さらに祈願した1週間後に運命の出逢いがあり結婚したとあってびっくりしました。まじかー!よほど弁天様に気に入られたんですね。

私は浅草の浅草寺でおみくじを引いて毎回「凶」か「大凶」を引き当てるんですが、浅草観音様に嫌われているのかしら…。

 

 

世界の危険思想 悪いやつらの頭の中/丸山ゴンザレス

世界の危険思想 悪いやつらの頭の中 (光文社新書)

危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏の浅く広くの新書。サブタイトルの「悪いやつらの頭の中」より、TV番組の中ではなかなか出せないゴンザレス氏の頭の中をのぞく感じ。ここ数日のTwitterトレンドに上がってくるのが韓国への悪意の塊だらけでつらいのですが、みんなもう一度冷静になってゴンザレス氏の本でも読め。

私が悪意の根幹にあると感じているのは、なんなのだろうか。
あくまで私なりの結論だが、相手を「甘い」と思って「ナメる」ことである。これこそが人類の持つ感情のなかで最悪に恐ろしい危険思想だと思っている。
危険思想の持ち主は、悪気があろうとなかろうと、際限なく自分の感情を押しつける権利を持っていると錯覚してしまうのだ。相手に対する敬意のなさが原因としか思えない。

 

日本にはもう少しでいいので、曖昧なままの状況を許す心が必要なんじゃないだろうか。許せないとか、拒絶するという考え方は、世界で一番危ない考え方につながりかねないと思うのだ。すべてのことに白黒つけたがるということは、必要悪を許容しないとか、曖昧さを排除する方向につながっていくと思うからだ。 

深夜番組『クレイジージャーニー』での登場を楽しみにはしていますが、番組的に、絵的になるからと功名を焦らず、命大事に!で頑張ってほしい。

間違う力/高野秀行

間違う力 (角川新書)

高野秀行10箇条

第1条 他人のやらないことは無意味でもやる

第2条 長期スパンで物事を考えない

第3条 合理的に奇跡を狙う

第4条…などをそれぞれの章タイトルにして、実際の行動を例に教えてくれる一冊。仕事が〜年金以外に2000万円が〜と悩んでばかりの日々に潤いと力を与えてくれます。かなり気休めになるのでおすすめ。なんだかんだいって高野さんの知力、体力、運の強さがあってこそ辺境作家になれたのではと思うけど。

最後の第10章「一流より二流をめざす」にて、「腰が軽ければ軽いほど面白くなる」の項目で「何かアイデアを思いつくと興奮して、いても立ってもいられなくなる、自分としては宝島の秘密の地図を発見したような気分」とありました。旦那も私もこの病気にかかっていて、とにかく熱しやすく冷めやすい。(ので、色々と物が増えていくんだけど) 「腰が軽い」のは、思いついたらすぐ飛行機に乗っちゃう私の親兄弟も同じ。

高野さんの言う「「てきとう」でも今はじめることが大事」を肝に銘じます。