夜空と陸とのすきま

ゆるいSF脳。SF小説2000本ノックを目指しています

イヴのいないアダム (ベスター傑作選)/アルフレッド・ベスター

イヴのいないアダム (ベスター傑作選) (創元SF文庫)

ひたすら積ん読がたまっていく本棚から、イヴ繋がりでベスター傑作選をチョイス。あとがきにある「絶版となっている河出書房新社奇想コレクション〉の『願い星、叶い星』を改題して、新たに出版」を読んでふと見上げると、同じ本棚にその奇想コレクション版があるし。ダブった…、やっちまった。再版の情報をよく調べて買いましょうね↗︎

さて、色々とSF小説を読んできたなかで、アルフレッド・ベスターと、バリントン・J・ベイリーの2人の作風はかなりクレイジーという印象。ベスターの『ゴーレム100乗』は疲労困憊して読んだ記憶があり、『虎よ、虎よ!』もワイルドすぎる。あのベスターだぜっ!と気合い入れて読み始めたけれど、この短編集は初期の作品が多く、クレイジー度はそうでもなかった。SFの定型をひねった感じ、意地悪してみた感じ。天邪鬼やなぁーと思いつつ、どれも落とし所が上手かったです。全部じゃないけど、印象深い作品の感想。

 

「ごきげん目盛り」

遺産を無くしたボンボンと、稀少価値の高いアンドロイドの宇宙逃避行。私はわたし、一人称がごっちゃになって誰だかわからなくなるサイコホラー。狂ってますなー。

 

「願い星、叶い星」

恐るべき子供たち〉という一時期流行ったジャンルがあるんですね。超能力を持つ子供たちみんなの目がピカッーって光ってるイメージ、もしくは白目ね。

 

「イヴのいないアダム」

地球最後の男の話。旧エヴァンゲリオンのラストがこれなら良かったのにー。シンジくん幸せだったのにー。

 

「選り好みなし」

なんでも異世界に転生する昨今のブームへの、強烈なツッコミになる話。

 

「昔を今になすよしもがな」

「地球最後の男女を頭のイカれた人間にして、その狂った目を通して世界をながめれば面白いかもしれないと考えた(ベスター談)」その通り、かなり面白いっす。廃墟のN.Y、セントラルパークの模型船陳列館に住む!芝生を家庭菜園にして、N.Y中の家具や雑貨を物色する毎日、オシャレだ。

 

「地獄は永遠に」

第4部まである地獄絵図の物語。解説によると、「全体に世紀末デカダン派の影響が見られ、第一部にはユイスマンの「さかしま」がこだましているが、第四部はジェイムズ・ブランチ・キャベルの影響かもしれない」

デカダン派もユイスマンもキャベルもわからない…『さかしま』は渋澤 龍彦が訳したので持っていたけれど読まずに手放した。〜の影響だねって言える知識と教養をみにつけたいです…。

 

yanhao.hatenablog.com

 

 

yanhao.hatenablog.com

 

 

願い星、叶い星 (奇想コレクション)

願い星、叶い星 (奇想コレクション)

 

 

 

七人のイヴⅢ / ニール・スティーヴンスン

七人のイヴ ? (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

月の無数の破片が落下し、地球は滅亡。かろうじて残った月の破片にたどり着いた人類の七人のイヴ達は、単為生殖により各人が選択した自分の遺伝子的特徴を残した七つの種族を作り出した。

それから5000年の月日が経ち、軌道上に建てた構造物ハビタッド・リングで30億に増えた人類は、再び地球の大地に暮らすために、テラフォーミングが進められているんだけど、レッドとブルー陣営に分かれて戦争状態というお話。

第一部、第二部で繰り広げられた壮大なスケールの物語は単なる序曲です…あれから5000年後という出だしに噴き出しつつ、5000年の歴史とハビタッド・リングの解説に200ページ。主人公達はいつ動き出すのか、わじわじしていたら、ファーストコンタクトと第一部の伏線回収であっという間に完。第二部が面白すぎたせいか、肩透かしを食らった感じ。第三部全部がエピローグでしたね。

こんなロマンチックなオチでなくても良かったのにな。もう少し主人公達が活躍する続きが読みたかったです。

全三巻、たっくましーい人類の活躍する物語でした。

サマー/タイム/トラベラー 上・下/新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

東京オリンピックのマラソン競技だけのために、大混乱を招き、現場SEが阿鼻叫喚するサマータイムを導入しようとか、いいかげんにせいやぁちころすぞごるぁなどと下品な言葉を発しながら鬱々とした気分になったところで、積ん読棚にあった「サマー/タイム/トラベラー」と目が合う。

本書は夏時間のサマータイムとは全く関係ない、ひと夏の冒険ジョブナイル。田舎町が舞台で、幼なじみの女の子がちょっと時間を「飛んじゃう」能力を得て、仲良しの少年少女がタイムトラベルを解明しようと議論や実験したり、ワイワイやっているうちに謎の事件に巻き込まれるお話。全体の構成や雰囲気は映画『君の名は』を彷彿させる。

タイムトラベルすると、なぜ背中のミズスマシと腸内細菌、衣服もついてこれるのか?なのに人間や猫ではダメなのか?などなど。そういわれればなんでだろうと目の付け所が面白かったです。それに対する返答はさっぱり意味分からなかったけど。

とにかく上下巻ともにほんまに高校生か?という主人公達の博識ぶりにクラクラしました。そんなにタイムトラベル物の名作SFや理論を振りかざすなら、巻末おまけに書名一覧を載せて欲しかった。

気合いの入った町の地図も縄文時代から未来の分まで所々に載せてくれていますが、本文とそんなにからまないので、活かしきれていないんじゃないか。

後半も詰め込みすぎてすっちゃかめっちゃかだったけど、ほろ苦いせつなさを感じる余韻はかろうじて残りました。

手の届く最良のものをつかまえて、そいつと共に歳をとれ。なぜって、愛するっていうのは、時期を待つものじゃないのだから。そして対価を支払ってこそ、大切に扱う動機も強くなる。

自転車屋さんの若旦那のこの台詞はいいね! 

世界の混沌を歩く ダークツーリスト/丸山ゴンザレス

世界の混沌を歩く ダークツーリスト

TBS深夜番組「クレイジージャーニー」で超絶人気の、危険地帯ジャーナリスト丸山ゴンザレス旅行記&「クレイジージャーニー」裏日記。世界中にあるスラム街、地下住人に取材したり、ドラッグやブラックビジネスの真相にせまる。

ここ数年は「クレイジージャーニー」を毎回録画して娘と一緒に見てますが、いやホントに素晴らしい教育番組。世界の現実をありのままに、広い視野をもてるよね。

さて本書では放送時でぼかしていた写真も、ストレートに載ってました(遺体とかうんことか)。そしてゴンザレスさんの番組スタッフに対する冷ややかな態度がウケる。ジャーニーの皆さん達は、取材中は結構スタッフにキレてるような。それでも現場での危険察知と判断が早いので、今まで無事に番組が作れているんだなと感心しました。これからも大胆に慎重に撮影していって欲しいです。

放送時も見ていて恐怖を感じたけれど、メキシコの麻薬戦争・カルテルの取材はよくやれたよなと思いました。夜中にホテルの部屋のドアを何者かにノックされ続けるなんて、完全に目をつけられているし。読んでいてこちらも冷や汗がでました。

メキシコも中東もこれからどうなるのか。まずはこの世界にはどこも解決の糸口が見つからずに、こんがらがっている状態のことばかりだということを知ることから。今は何もできなくても、知ることは大事。

 

 

 

 

七人のイヴⅡ/ニール・スティーヴンスン

七人のイヴ ? (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

月が7つに分裂し、無数の月の破片の落下<ハード・レイン>がいよいよ始まる。宇宙ステーションを核とした<クラウド・アーク>に逃れた人類は1500人。襲いかかる困難の数々、そして内部分裂、はたして人類は生き延びれるのかー近未来宇宙開発ハードSF大作、第2弾。

いよいよ到来の<ハード・レイン>で地球上の人類は滅亡するのですが、Oh!70億人が一瞬で消滅ってすさまじい。逃れられない死を迎えるため、ノートルダム寺院フィルハーモニー管弦楽団の生演奏を聴きながら死んでいくなんて、タイタニックみたいでせつない。

軌道力学の知識がないので、想像しにくいところもあったけど、わからない箇所はすっとばす。

Facebookが宇宙ではSpacebookになって、やっぱりSNSでわいわい言ってるのが面白い。

資源を新たに追加する奇跡のミッションを乗り越えても、技術者でない政治家がかき乱して内部分裂、宇宙放射線によるガン発病、重なるアクシデント!さらに食糧不足とくれば最後にやっぱり出てきた○○、エグイ…。いやはやハードでした。第三巻ってどうなるんだろう。

登場人物で唯一の日本人がジロー・スズキ君で、フクシマで汚染除去を管理していた原子力技師という設定がいやはや、SF小説では日本=フクシマって鉄板になりそうですね。

濃密さは1巻目以上で、私のショートした脳が導いたひらめきは、「そうか、イチロー選手がイチロー・スズキだからジロー・スズキか」。どうでもいい。