夜空と陸とのすきま

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幻詩狩り/川又千秋

幻詩狩り (創元SF文庫)

1948年のパリ、シュルレアリスムの巨星アンドレ・ブルトンが再会を約束した、若き天才詩人フー・メイ。
彼の詩は麻薬のような力を秘めていて、詩を読んだ者は現実世界を捨て精神世界の彼方へと去り、失踪または死亡するのだ。
時を得て、その詩が現代日本で翻訳され、ひとりまたひとりと、読む者たちは詩に冒されていく…言葉の持つ魔力の物語。

シュールレアリスム(超現実主義)芸術運動といえば、ダリ、エルンスト、マグリットと幻想絵画の方ばかり思い浮かび、詩人アンドレ・ブルトンがそもそもの始まりだったことを失念。なのでネット検索やエルンストの画集をひっぱりだして合わせて読み進めたり。

最後の方で突然100年後の未来に話が飛んで、やや強引なオチへと続き驚いたが、それぐらいぶっ飛んだことをしないと、読者を魔性の詩の力から引き離せなかったからかなと思いました。

異界へ導く鍵「夢の言葉」の持つ性質を、作者は「反在性」と名付けてますが、ただ言葉を読むだけで、精神世界の彼方へ連れて行かれる、それはまさしく文学そのもの。面白いな。P・K・ディックの記述もあってニンマリ。

作中に出てくる現代日本とは80年代バブル経済真っ盛りの日本。「西都デパート」で「辻見会長」が押し進める展覧会などが登場するのは、西部池袋デパートにあったセゾン美術館のもじりですよね。セゾン美術館は前衛的な展覧会が多くて面白かったな、懐かし〜。