夜空と陸とのすきま

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ライズ民間警察機構―テレポートされざる者・完全版/フィリップ・K・ディック

 

 

 テレポート装置<テルポー>を使って瞬時にフォマルハウト第9惑星に移住を始めた人類。しかしこの装置を利用するとなぜか片道通行しかできず、フォマルハウトからの通信では、ここは地上の楽園と伝えてくるが、一体現地で何が起きているのか…というお話。

なんだか昔の在日朝鮮人の帰還事業みたいですね。

今回も主犯はドイツ帝国なんですが、ドイツ人がディック本読んだらへこむだろうなぁ。ディックはこの時期本当に世界に絶望していたらしく、警察や女性に疑心暗鬼だったのがよくわかります。

今まで読んできたディック作品の中でも、とにかく一番破綻している本書。未完成で死後に他作家が追記して完成させたら、その後にディックの未発表テキストが発見されるなどして、バージョンが複数あるらしい。伏線も放置、主人公の性格も豹変、ヒロインと主人公がなぜ惹かれ合うのかもわからず、テルポーしたのが主人公だったり社長だったりで曖昧。でも書かれているテキストが現実になるドクター・ブラッドの書など様々なSFのアイデアは面白い。ああ、もったいない。巻末の解説もすごく苦労しているのがわかる。超破綻しているけど、ディックファンなら楽しめるでしょう、ね?と書かれたら、まぁ部分部分は面白かったけど、話はなにがなんだかでした。残念。