夜空と陸とのすきま

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ビリー・リンの永遠の一日/ベン・ファウンテン

ビリー・リンの永遠の一日 (新潮クレスト・ブックス)

19歳のビリーが属するブラボー分隊イラクの戦闘でたまたま全米テレビ中継され、その功績から全米のヒーローになってしまう。一時帰還をはたし勝利の凱旋ツアー、二日後にイラクに戻るその日の数時間をビリーの視点で濃密に描くというお話。

クライマックスのアメフトのハーフタイムショー。スタジアムでビヨンセと並んでスポットライトを浴び、ゴージャスなショーに無理矢理参加させられるブラボー分隊と、イラクでの激しい戦いがクロスするのがとても臨場感溢れていてすごかった。スポットライトの点滅と効果音による爆音に、戦場に慣れた体が条件反射で防いだりするところとか。

アン・リー監督で映画になっていたなんて知りませんでした。アン・リーは細かい心理描写が上手いのでぴったりだ。日本未公開だったとは残念です。

高卒で何も世間を知らないまま戦場にきてしまったビリーに、本を読むことを教え、知性を与えたシュルーム。映画では、シュルーム役が「ワイルド・スピード」でおなじみのヴィン・ディーゼル

このシュルームとビリーのエピソードは本書のところどころに散らばっているのですが、とにかく騒しく無神経にはしゃぐ市民とスタジアムの中で、シュルームの思い出話が出てくるとほっとするのです。ヴィン・ディーゼル、うん、いい兄貴役ぴったりだな。イラクで死んじゃうんだけどな。

このようにニコニコしている市民たち、何もわかっていない市民たちがこの国の本流なのだ。物事を動かしているのはこういう人たちだ。何も知らない無垢な人たち。彼らが国内で見ている夢が支配的な力なのである。