夜空と陸とのすきま

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地球の果ての温室で/キム・チョヨプ

ダストという毒物の増殖により滅亡寸前だった大厄災から60年。ようやく復興を遂げて平和な時代になった。植物学者のアヨンは、謎の蔓草モスバナを調べていて、厄災から世界を救った女性たちの秘密にたどり着くというお話。

残りわずかな食物を奪い合う終末世界を描いた『ザ・ロード』みたいに殺伐としたところもあったけれど、物語が復興後から過去を振り返るので人類が絶滅していない安心感があり、自然の治癒力が描かれていて全体的に優しさを感じるお話でした。シスターフッド、女性たちのたくましさも強く出ていて良かった。

私は『ザ・ロード』は読んでいて途中で苦しくて挫折したので…。廃墟で腐った缶詰を食べる描写が続くのがつらたん。

自己表現が不器用なサイボーグのレイチェルと整備士ジスとの絡みが良かった。時間をかけてコミュニケーションをとっていくところも。そしてすれ違っていくところも、ホントに丁寧に書いていて。

レイチェルといえば『ブレードランナー』から命名したのかが気になります。

 

作者はコロナ禍で外出できない中、引きこもってこの本を書いたそうです。パンデミックを体験しながら物語に昇華できる作家の想像力はすごいな。