夜空と陸とのすきま

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鳥の歌はいまは絶え/ケイト・ウィルヘルム

サンリオSF文庫で絶版だった名作が創元SF文庫で復刊。ル=グィンとカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を彷彿させるSF。自然描写が多くて、窓から日の光が入り込んでいて明るい情景なのに、状況がゆるやかに悪化していくところとかが似ているなぁと思いつつ。

本作は3部作に分かれています。世界中の生命が放射能のせいで絶滅していく中で、クローン技術を駆使して谷に住む一族を存命させようとする第1部。谷のクローン達が作り上げた秩序正しい社会の中で、主体性に目覚めたモリーを追う第2部。弱体化していくクローン達とモリーの息子マークの争いの第3部。

創造性がなく新しい物事を生み出す力を失ったクローン達が破滅に進み、何も知らないが故に幸せそうに生命を終えていく姿がなんとも…。経験と創造性の育成の大事さを訴える内容でした。ある意味『育児書+SF』だったりするのか。