夜空と陸とのすきま

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ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース柴田元幸翻訳叢書

柴田さん訳の「英文学」名作短篇集。イギリスというと、この表紙絵のように灰色で霧がかっている黒のイメージ(逆にアメリカは太陽さんさんで乾燥している感じ)。どの短篇も太陽光の少ない、陰湿なイギリスらしさが感じられました。

 

 

アイルランド貧民の子が両親や国の重荷となるのを防ぎ、公共の益となるためのささやかな提案/ジョナサン・スウィフト
最初から頭突きをかまされる!つかみはOK。

 

■死すべき不死の者/メアリー・シェリ
フランケンシュタイン』の作家。編訳者あとがきで「言い出しっぺの強さがある」と書かれていますが、グループSNEソード・ワールドじゃないの?と思えるほど古さを感じない。1833年かぁ。

 

■しあわせな王子/オスカー・ワイルド
児童書向けに挿絵多めで話を絞ったのは読んだことがあるけれど、がっつり原作を訳しているのは初めて。ツバメが暖かいエジプトの思い出を語り、早く南国に旅立ちたがっているのに、自分の願望の小間使いを強制させる王子。また物語の別の視点がみれました。

 

猿の手/W・W・ジェイコブズ
こちらも有名なお話なんだけど、原作がここまでホラーだとは。行間からしみ出してくる怖さ。時計の針の音、階段のきしみ、壁の中のネズミの声、ドアノックの音など、音の使い方!最後は読者の想像力に丸投げなんだけど、絶対にバットエンドしか思いつかない。

 

■運命の猟犬/サキ
サキのブラックな皮肉が素晴らしいと絶讃していたのはエッセイストの中野翠さんで、その影響を受けて短篇集を持っています。行き倒れしそうな主人公が、行方不明になった貴族の放蕩息子になりすまし、豪邸で使用人に坊ちゃま坊ちゃまとちやほやされてお世話されるが…というお話。運命の猟犬とは痺れる表現。

 

■象を撃つ/ジョージ・オーウェル
青年期にビルマで警察官をしていたオーウェルの自伝的?短篇。ビルマで暴れ象を退治する話。ビルマにおいて、帝国主義の英国人である自分の立ち位置を痛いほど表現していて、心の葛藤がすごかった。