夜空と陸とのすきま

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雪男は向こうからやって来た/角幡唯介

角幡さんはストイックでカッコいい。いつも冷静に客観視する人で、未知なる領域への冒険に入念に準備してからチャレンジする冒険家。だから未確認生物みたいな眉唾で怪しいものとは無縁…というイメージがあったのに、今回は「雪男の捜索」なんです。でもそこは元新聞記者の角幡さんなので、雪男捜索隊に参加しつつも、雪男に魅了されて追いかけている人を追いかける話。

ルバング島のジャングルで30年間サバイバル生活をしていた日本兵小野田寛郎さんを描いた映画がこのほど完成したそうです。私は高校生の頃に小野田さんの手記を読んで、素直に感動したけれど、その後手記を書いたゴーストライターの暴露本を読み、小野田さんはかなりヤバイ人だったという印象。

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『雪男は向こうからやって来た』には、その小野田さんをジャングルで「発見」した鈴木青年こと鈴木紀夫さんが、一躍有名人になった後に誰からも”小野田少尉の鈴木”と呼ばれるのが重荷になり、雪男捜索に人生をささげていく過程を、角幡さんが丁寧に追いかけています。この本であの鈴木青年が出てくるとは思わなかったので驚きつつも、小野田少尉が映画になるなら、執念で追いかけた雪男の鈴木も映画になって欲しいな。

ラストの現場検証と鈴木さんが雪男をみたという確信は胸熱でした。