夜空と陸とのすきま

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流れよわが涙、と警官は言った/フィリップ・K・ディック

流れよわが涙、と警官は言った

誰もが知るセレブ芸能人のジェイスン・タヴァナー。ある朝目覚めると誰も自分のことを覚えていなく、IDも消滅していた。”存在しない男”となったタヴァナーは警察に追われる身となるという話。

逃亡先で次々と助けてくれる女性達と呑気に話しまくるタヴァナー。一方追いかける警察本部長フェリックス・バックマンもあせるわけでもなく、わりと気の抜けた逃亡劇。さらにバックマンの妹が登場し、関係をこじらせて…。とてもディックの内面とリンクしすぎている内容で、執筆時のドロドロな結婚と恋愛関係とかヤク中状態とか、もう物語を書くことでかろうじて踏みとどまっていたような感じが見てとれます。というわけで話の面白さはともかく(けっこう唐突に物事が進む)、心理描写は傑作だと思いました。なんかアムロとシャアとララァの関係みたいな。