読んでは挫折しを繰り返し、ようやく読み終えました。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの12篇の短編集。
SF界では長らく謎の多い人物だったティプトリー、実は女性で名前はアリス。アフリカの大地で育ちCIAに所属してペンタゴンで働き、匿名で謎の男性SF作家としてデビューし、晩年は夫と心中自殺しましたと、波瀾万丈すぎる人生を歩んだ作家。ティプトリーの伝記にあたる本『ジャングルの国のアリス』も積ん読本棚にあるのでそのうち。
ティプトリーの文章はクセがあり、私にとっては読みやすくはなかったです。寝る前に読んでいると寝落ちすることしばしば。CIAやペンタゴンにいながらこういうSFを夢想していたのかと思うと、テキストに色んな感情と鬱憤をぶつけているようにもみえます。
『接続された女』
一番面白かった短編はヒューゴー賞受賞作品のサイバーパンク。太っていて醜い女の脳神経が接続された先は絶世の美女のロボット。そして高価な商品を身につけて街を歩き、ステマ(ステルスマーケティング)を行うというお話。出だしが「聞け、ゾンビ。オレを信じろ」ですよ。オタクに「お前らにも夢がある話だ」と諭す、すげー。色々と今を先取りしていて興味深いです。
『愛はさだめ、さだめは死』
ネビュラ賞受賞作、やっぱりなにかしらの賞を取っている作品は完成度が抜群に高い。エイリアンのライフサイクルの話ですが、カマキリの話に思えた。この短編集のうちで一番飛び跳ねている文章で、リズムが独特です。Planを「さだめ」と訳していてかっこいいタイトル。
『エイン博士の最後の旅行』
飛行機を乗り継ぎ、各国にウイルスをばらまく博士の話。ちょうど中国・武漢発の新型ウイルスが話題になっているのでタイムリーすぎて怖い。
『男たちの知らない女』
地球の男に飽きたところよUFO!というお話。痛快。